2016.07.01

ゼンマイ選びのウワサの真相

機械式時計が復権してから約30年が過ぎ、時計を取り巻く環境は大きく変化しました。世界の時計市場の規模は、ここ15年だけでも2倍以上に伸びており、好調な売り上げを背景にコンピューターによる設計技術の開発や最新の工作機械による高精度なパーツ製造が本格化。その結果、時計の品質は著しく向上し、いまや"どんな時計を買ってもハズレがない"という状況なのです。その一方で、時計ブランドは、競争激化による差別化のためにリブランディングを進めており機構、素材、デザインなど、あらゆる局面で新しい動きが目立ってきました。そこで今回は、時計に関するさまざまなウワサを徹底解明。時計選びに役立てていただければ幸いです。

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トゥールビヨンへの見方が変わります

クルクルと機械が回転するトゥールビヨンは、人気の高い超複雑機構。高額モデルの代名詞でしたが、なんと今年、タグ・ホイヤーが167万円台のトゥールビヨンモデルを発表し、業界を驚かせました。

このモデルの凄いところは、“販売価格の数倍の価値を作る”という明確な目標を立て、それに向かって作られた初めてのトゥールビヨンウォッチということ。

カーボンとチタンで機構を作り、しかもクロノグラフ搭載でクロノメーター認定を取得しているのですから驚きです。

論理的に構築された最先端トゥールビヨン

Tag Heuer [タグ・ホイヤー]

タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02T/167万5000円(予価)

価格帯に目を向けがちですが、このモデルの真価はそこにはあらず。生産技術や材料工学の最先端を融合させることで生まれたトゥールビヨンであり創業以来、"前衛"であり続けるタグ・ホイヤーらしい一本なのです。
時計業界を震撼させた最新話題作/開発を重ねていた自社製ムーブメントCal.CH-80をベースにしたクロノグラフ搭載のトゥールビヨンです。機構の上部にキャリッジを支えるブリッジを持たず、浮遊しているように見えるフライング式を採用。ほとんどのパーツは自社工房で製造しており、高精度の証となるCOSC認定クロノメーターも取得済みなのです。モダンなスケルトン仕上げや12体構造のケースなど、細部までこだわっているので、価格以上の満足を得られます。自動巻き、Tiケース(45㎜)、アリゲーター×ラバーストラップ。100m防水。9月発売予定/タグ・ホイヤー

しかしこれによって、ほかのトゥールビヨンの価値が失われたとはいえません。パテック フィリップでは、パーツを丁寧に磨き上げたトゥールビヨンモデルを製作しますが、その機構は紫外線の影響を考えてケースバック側にセットしました。つまり技術力と美しい仕上げへの探求心、そして真摯な姿勢をこの機構で表現しているのです。

職人魂から生まれた見せないトゥールビヨン

Patek Philippe [パテック フィリップ]

Ref.5101P/参考価格(オーナー私物)

そもそもトゥールビヨンは、精度追求のために考案されたモノ。より高品質の時計を作りたいという信念が詰まっているメカニズムなのでパテック フィリップは、この機構を"飾り"にはしないのです。
この奥ゆかしさがむしろうれしい/優美なアールデコ様式のレクタンケースを採用し、搭載するムーブメントは10日間パワーリザーブのCal.28-20/222。ダイヤル側では機構を見せず、スモールセコンドに小さく「TOURBILLON」と明記するのみ。この奥ゆかしさがこのブランドの誇りなのです。ムーブメントは左右シンメトリーの美しい設計となっており、職人が丹念に磨き上げたブリッジやキャリッジは、息をのむほど美しい。これを堪能できるのは、オーナーだけの特権です。手巻き、Ptケース(51.7×29.6㎜)、アリゲーターストラップ/パテック フィリップ(アワーグラス銀座店)

いまやトゥールビヨンは“回転していれば良い”という時代ではありません。この複雑機構で何を表現したいのか。そんなことを理解して時計選びを楽しむ時代が始まりつつあるのです。

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見たことないのに見たことある時計って?

デザインコードも個性です

見たことないのに見たことある時計って?

「これが今年の新作です!」と紹介されたものの、なぜか見た覚えがある……。

それはあなたの勘違いではありません。実は老舗ブランドを中心に自分たちが作ったデザインコードを明確に打ち出そうという動きが目立っているのです。

ブランドを代表するデザインコード

時計をデザインするうえで、もっとも難しいのは、“腕にのせて使う”という大前提を崩すことができないこと。腕にのせる時点でおのずと直径や厚み、あるいは素材などに制約が生まれるので、時計のデザインの自由度は意外と少ないと聞きます。

しかしその制約こそが、逆に傑作デザインを生み出す源泉でもあります。限られた余地で個性を表現するには、ディテールに目を向けるしかありません。その結果、時計のデザインはどんどん洗練を極め、スタイルが確立されていきました。つまり“デザインコード(デザインをするうえでの決まり事)”が完成したのです。

決まり事が明確なデザインであれば、そのモノ自体を知らなくても、素性の見当がつく。例えばポルシェ911は、それがターボなのか、タルガなのか、空冷なのか……。そんなことは関係なく、誰もが「これはポルシェである」と理解する。それはあの形状がデザインコードとなり、世間に広まったから。それと同じ現象が時計にも起きつつあるのです。

その好例が、オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク」。英国王立海軍の戦艦ロイヤルオークの舷窓(船の側面にある窓のこと)をイメージした8角形ベゼルと方向まできれいに揃えたビス(ケースバック側から留めている)が特徴で、1972年の誕生以来、このスタイルを受け継いでいます。

Audemars Piguet [オーデマ ピゲ]

ロイヤル オーク ダブルバランスホイール オープンワーク/440万円

最新技術と華麗なオープンワーク/オープンワークが印象的ですが、このモデルのキモは8時位置の脱進機にアリ。テンプと呼ばれるパーツを上下に二組セットすることで、精度と安定性が向上するというもの。かなり本格的な機構ですが、王道デザインなので安心感があります。自動巻き、SSケース(41㎜)×ブレスレット/オーデマ ピゲ(オーデマ ピゲ ジャパン)
「ロイヤル オーク」は大ヒットモデルとなり、その後さまざまなバリエーションが誕生し、「ロイヤル オーク オフショア」では、さまざまな先端素材で8角形を作り、「ロイヤル オーク オフショア ダイバー」では、8角形ベゼルを守るため、逆回転防止ベゼルをインナー式にしました。

このように一つのデザインコードを徹底的に守り抜くことで、形状のイメージが強くなり、時にはモデルの名前以上に有名になることすらある。どこかで見たことある、知っている気がするという“既視感”が生まれることで、ようやく名作への扉が開かれるのです。
写真/人物&ロケ静物・谷田政史(CaNN)、静物・奥山栄一(CUVACUVA)
スタイリング/吉野 誠
文/篠田哲生
写真提供/Aflo,amanaimages,Getty Images
撮影協力/アワーグラス銀座店、ポルシェ カスタマーケアセンター

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