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2017.06.23

昭和のいい女が愛したあの店、あの場所【3】安井かずみの場合

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文/川田 剛史 撮影/角田 進

安井かずみが遺した指定席

時代がまだ女性の自由を認めていなかった頃、それでも自らの力で道を切り開いていった女性たちがいました。それが昭和のいい女。彼女たちの愛した名店を平成の女子に紹介しながら、いい女はかくあれとさりげなく手を引いてあげましょう。第3回は作詞家の安井かずみさんがお好きだったあの店、あの場所へ。
  安井かずみさん(1939年~1994年)/作詞家。グループサウンズや著名歌手、アイドルらに詩を提供し、「おしゃべりな真珠」や「私の城下町」など数々のヒットで知られる。ミュージシャン、加藤和彦さんとの優雅な結婚生活はメディアにも多々取り上げられ、注目の的に。1994年、肺がんで死去。©主婦と生活社
安井かずみさん(1939年~1994年)/作詞家。グループサウンズや著名歌手、アイドルらに詩を提供し、「おしゃべりな真珠」や「私の城下町」など数々のヒットで知られる。ミュージシャン、加藤和彦さんとの優雅な結婚生活はメディアにも多々取り上げられ、注目の的に。1994年、肺がんで死去。©主婦と生活社

六本木は文化・流行の発信基地だった

キャンティ(飯倉片町本店)

今の時代、自分の感性を武器に成功をつかむ女性は珍しくはありません。が、40年前、50年前となれば話は別。まだまだ男性が強かった高度経済成長期に、自分の財力でベンツを乗り回し、イヴ・サンローランを身に着けた、いい女がいました。

それが作詞家、安井かずみさんです。まだファッションリーダーなる言葉はありませんでしたが、当時の彼女はまさにそれ。ファッションだけでなく、類まれなる美意識、自由奔放かつエレガントな生き方など、すべてが人々の憧れだったのです。

そんな安井かずみさんを語るうえで欠かせない名店が飯倉片町にある「キャンティ」であります。
  「キャンティ」は1960年に開業した日本におけるイタリアンレストランの草分け。単なるレストランではなく、知識人や芸術家、芸能人といった時代の先端を行く人たちの集うサロンとしての役割を担っていました。
「キャンティ」は1960年に開業した日本におけるイタリアンレストランの草分け。単なるレストランではなく、知識人や芸術家、芸能人といった時代の先端を行く人たちの集うサロンとしての役割を担っていました。
安井さんのエッセイや周囲の方の証言からも、「キャンティ」が彼女の心の拠り所であり、いい女の生き方を学ぶ場であったことが分かります。のちに時代の最先端を行くことになる彼女の感性に大きな影響を与えたのが、創業者の妻でタンタンの愛称を持つ川添梶子さん。

安井さんは学生時代から梶子さんを慕って「キャンティ」とその一階にあったブティック「ベビードール」(梶子さんが運営。現在はアル・カフェになっている)に出入りし、交流を深めたのだとか。時代を切り取る独自の審美眼、美意識、着こなし方など、エレガントな人生を歩む彼女が独自に得たものは多いでしょう。

でも、その感性が培われたのは「キャンティ」と梶子さんという存在があったからこそ。1990年に製作された『キャンティ30年史』には安井さんのエッセイが掲載されています。その内容はお店の具体的な説明よりも、梶子さんへのリスペクトにあふれたものでした。

「『いい女はね……』と云うのが彼女の口癖だった。(中略)いい女……とは生活レベルでのエレガントな女なのだと、このことは私が肝に銘じたタンタンの名言である」(『キャンティ30年史』)

そんな安井さんがいつも座っていた席は2番テーブル。開店からしばらくして店が増床した後も、安井さんの席と言えば変わらず2番がお決まりだったとか。

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  安井さんの指定席だった2番テーブル。時代は移り変わり、現在、店内は分煙となったので、この席での喫煙はできません。
安井さんの指定席だった2番テーブル。時代は移り変わり、現在、店内は分煙となったので、この席での喫煙はできません。
さて、安井さんは、「キャンティ」でどんなメニューを好んでいたのでしょう。当時を知るお店の関係者からは「仔牛のカツレツミラノ風を召し上がっている姿をよくお見かけしました」という証言が。

ほどよい分量が華奢な安井さんには丁度よい塩梅だったのかもしれません。これなら体型が気になる平成女子にも安心してオススメできそうです。
  「仔牛のカツレツミラノ風」は、お肉の柔らかさと軽い衣の食感など、女性に好まれる上品な仕上がり。5,400円(サービス料別)。
「仔牛のカツレツミラノ風」は、お肉の柔らかさと軽い衣の食感など、女性に好まれる上品な仕上がり。5,400円(サービス料別)。
余談ながら、安井さんと夫であった加藤和彦さんの共著『ワーキングカップル事情』(新潮文庫)には二人が「銀座マキシム」でクリスマスを過ごしたことが書かれています。また、おふたりの結婚披露宴もそこで行われたそうです。が、そんな銀座の名店も2015年に閉店。

いまや、「キャンティ」は安井さんの足跡をたどれる、貴重な場所と言えるでしょう。「いい女になれる指定席、座ってみない?」なんて誘い文句で、平成女子を「キャンティ」にご招待してはいかがですか?

キャンティ 飯倉片町本店(レストラン/B1F)

住所/東京都港区麻布台3-1-7
営業時間/11:30~23:00(L.O. 22:00)
定休日/日曜
問い合わせ/☎03-3583-7546

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