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2019.06.06

旅立つ娘のために元祖弁当男子のパパが作った最後の弁当、その中身は?

娘の幼稚園時代に3年間毎日、小学校では月イチ、そして中学で毎日・・・・・・のべ800食のお弁当作りが突然終わりを告げた。愛娘の旅立ちにパパが持たせた弁当とは?

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文・写真/柏原 光太郎

あるとき妻に、「娘が幼稚園を卒業するまで弁当を作る」と宣言したことから始まった私の弁当作り。幼稚園3年間、小学校は給食だったので月1回の弁当日と塾弁くらいでしたが、中学に入ってからは平日も弁当となり、通算だと800食以上の弁当を作ったでしょうか。もちろん、世の中には年の近い子供が3人いて20年以上毎日のように弁当を作っているお母さんもいらしゃいますから、たかだか800食では自慢にもなりません。
たまにはサンドイッチも弁当にした。ステーキサンド、マッシュルームのソテー、半熟卵、アスパラガスとスモークサーモンのフルーツドレッシング和えなど。これが通学する娘のために作る、最後の弁当となった。
その上、前回「パパから中学生の娘へ ── 332個めの弁当を作り終えた朝に綴る、父と娘の毎日弁当」を書いたのは2018年5月のことでしたが、その後我が家には思いもかけない変化がおき、娘はその秋からアメリカに留学することになりました。

「高校を卒業するまで、まだ4年間はあるから大変なんですよ」と自嘲的に話しながらも、実はまだ弁当を作れる環境を喜んでいたのですが、アメリカに旅立つときに機内弁当を持たせたのが最後で、私の弁当生活は唐突に終わりを告げたのです。

娘はかねてからアメリカで勉強したいと言っていましたが、サマープログラムに参加したボーディングスクールにご縁をいただき、秋から渡米。出国間近は手続きで忙しく過ごしたのですが、あと数日というときに「もう弁当を作ることはないんだなあ」と実感。妻からも「機内食食べるよりあなたが最後の弁当を作ったら」と言われてメニューを考え始めました。
娘が留学のために飛び立った際、機内で食べるために持たせた弁当。鴨焼き、つくね、煮卵、こんにゃくの明太子和えなど、娘の好物ばかりを詰めた親心。
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といっても、当日作り始めたら行き当たりばったりになりましたが、彼女の好きな鴨胸肉を中心に食べやすい弁当にしたつもりです。娘も機内で全部食べたと言ってくれ、気を使ってくれたんだとは承知しながらも自己満足に浸っていました(笑)。

それから一年ほど。料理は相変わらず作っているし、いまでも弁当なら毎日作りたいと思います。あくまで娘のためのものなら、ですが。
弁当を作っていることが知られると料理店にご主人から食材の提供を受けることもあった。鯨の竜田揚げ、トウモロコシ、ブロッコリーのミートソース和えタコと海老とキュウリのチラシ寿司など。
いま、あのころの弁当を振り返りながら、やはり弁当を作ってきた経験者と話していると、私の弁当はどうやら「男性目線」で作られたものだったようです。お母さんの「生活者目線」とはどう違うか。中身は居酒屋やレストランで食べたものを再現した料理も多く、酒肴弁当ですからその通りですが、作るほうの視点から考えれば、それは「遊び心で作る弁当」。毎日作らなければならないと考えるのではなく、明日はどんな弁当にしたら楽しいかな、と日々考えることによって、弁当作りはわくわくするものになるのです。
ササミチーズカツ、タコのガリシア風、春雨のXO醤煮など満載で、思わず飲みたくなる?酒肴弁当の一例。
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娘の弁当を作っているとき、私は自らにハードルを課しました。いわく、既製品、冷凍食品、既成の調味料(クックドゥみたいなもの)は使わない、前の晩の料理をそのままいれない、週内に同じ料理は入れない、30分以内に作り終える、弁当のあとの朝食は新たに作る、などです。

 いまの冷凍食品も、既成の調味料も美味しい。子供だって美味しければ同じものを食べたいことも知っています。でもこれは単に私が楽しく作るために掲げたハードル。だから逆に「おかずはすべて冷凍食品」で一週間作ってみてもいいのです。世の中にいかに便利な冷凍食品がたくさん流通しているかがわかり、楽しいと思います。
娘がいなくなってから、私の好きな店の料理を再現する弁当に一時凝った。今回は麻布十番の名店、天ぷらの「たきや」の和牛ヒレ天ぷらを再現。あとは、エリンギの天ぷら、人参と玉ねぎのかき揚げ、アボカド、トマト、チーズの餃子、インゲンの蝦醤和え。
「時短」も弁当の大切なキーワードです。そのために週末にキンピラや切り干し大根の煮物などを作っておけば、詰めるだけで完成! というわけですが、私は好きじゃない。同じものを毎日詰めていると、独創性を発揮できるスペースがなくなるじゃないですか!

というわけで私の弁当は、帰宅して冷蔵庫を見回し、あるもので作る「ひとり料理の鉄人」。もちろん肉や魚は冷凍しているので、寝る前に解凍し、寝床に入って明日の弁当のメニューを考えるのです。

その基本は彩りと食感。気をつけないと茶色になってしまうのが弁当ですから、赤、黄、緑などをバランスよく取り入れるのが肝心です。赤はトマト、パプリカ、人参、タラコ、鮭あたり。黄色はパプリカ、かぼちゃ、卵焼き。白は鶉の卵やササミ。緑はブロッコリー、インゲン、スナップエンドウあたりをよく使いました。なかでもプチトマトとブロッコリーは幅もあるので、最後の空間に押し込むだけで全体が締まった感じになります。

そして食感とは噛んで硬いものと柔らかいものをうまく組み合わせること。違う料理を食べたときに食感が違うほうが、気分がリフレッシュするからです。
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 先日、イースター休暇で帰国した娘がアメリカに戻ったときにも機内弁当を持たせた。鶏の唐揚げ、アスパラガスのおかか和え、鶏ハツの甘辛煮、海老玉、プチトマト。ごはんは鯛とフキの炊き込みご飯。
たとえばメインは豚の生姜焼きにするとしましょう。朝起きて、豚肉と玉ねぎを切ったら、生姜を摺って醤油と味醂と日本酒でタレを作ります。それと平行して鶏のササミを水に入れて沸騰させます。沸騰して30秒したらあげておく。そして沸騰した湯で今度はインゲンを茹でる。さらにシラタキを乾煎りしたら、タラコをあわせてちょっとだけ醤油と味醂をたらしましょう。

 豚の生姜焼きを作ったら、鶏のササミとインゲンをあわせておかかで和える。これで三品が出来上がり、色味的には茶、緑、赤が揃ったわけですが、もう少し欲しいですね。冷蔵庫を開けたらかぼちゃが。なら挽肉と炊き合わせて黄色を加えてみようか……これでおかずは終了。

あとは盛り付けるだけです。もしもスカスカだったらプチトマトでもいれ、ごはんにも色味が欲しければ、煎りゴマでも振りましょうか。これなら30分もあれば出来るはず。こう考えると弁当って簡単だし、楽しいでしょう。鶏のササミとインゲンはマヨネーズで合えたっていいし、タラコは明太子にしてもシラスにしてもいい。バリエーションはいくらでも出来ます。

要はまず、作ってみる。それも冷蔵庫の中にあるもので。レシピはクックパッドを見たっていいんです。せっかくなら楽しむ工夫をしながら作ってみる。そうすれば弁当作りは継続できると思いますよ。

● 柏原 光太郎

1963年東京生まれ。(株)文藝春秋でウェブ事業、宣伝部門を担当する傍ら、十数年前から食の魅力にはまる。食べるだけでなく、作る楽しみを普及させようと男性が積極的に料理をするコミュニティとして、「台所男子の会」「軽井沢男子美食倶楽部」「日本ガストロノミー協会」を立ち上げる。インスタグラム:kashiwabara_kotaro

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