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2017.06.24

昭和ノスタルジーは何故商品化され続けるのか?

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文/西澤まどか 写真協力/歌京

この夏、都内有数のラグジュアリーホテル「グランド ハイアット 東京」では昭和を彷彿させるレトロな「昭和 ビアガーデン六本木~6丁目の夕焼け~」が開催されると話題を呼んでいます。こちらのホテルでは10年以上前からディスコイベントを定期的に開催するなど、“昭和”に焦点を当てたイベントに力を入れています。

映画『ALWAYS 三丁目の夕日』が公開されたのは2005年。以降このシリーズは3作を数える人気シリーズに。街では昭和居酒屋や昭和洋食、昭和喫茶が人気を集め、昭和歌謡スナックや駄菓子屋バー、給食食堂まで登場。カセットテープやインスタントカメラも話題になるなど、“昭和”を素材にしたレトロビジネスは枚挙にいとまがありません。平成に年号が変わって来年で30年。昭和レトロとよばれる回顧ブームは当時を知る層だけでなく、平成生まれの若者にまで広がって一向に止む気配がありません。それは何故なのでしょう。

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平成世代にとって「昭和」は憧れ

平成世代にとって「昭和」は憧れ

トレンド情報に詳しいマーケティングライターの牛窪恵さんに聞いてみました。
「平成生まれの若者にとって、本やテレビ、映画などでしか知らない『昭和』は、実は古き良き文化の象徴であり、ある意味、憧れの存在なのです。彼らは昭和に対して『ものを大切にする』『シェアする』そして『周りにやさしい』といったプラスのイメージをもっています。そこに彼らは日本人の理想的なアイデンティティを見出しているのです」(牛窪さん)

それはつまりこういうこと。2020年の東京オリンピックに向けて、政府ぐるみでインバウンドを歓迎し、ますます外国人と触れ合う機会も増えています。すると若者たちは「日本人である自分とは何か?」と命題を抱えることに。そこで「昭和」の日本人像に自身の拠り所を求めるというのです。

「ただ、昭和といってもバブル期には否定的です。自然を壊して湾岸リゾートを作るとか、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返すよりは、リノベーションして古い建物を長く使うようなことに共感します」(牛窪さん)

バブル崩壊後、アメリカ主導の成果主義に社会が翻弄され、学校や会社をはじめ友人関係や家庭にまで殺伐とした人間関係がはびこりました。平成生まれの世代はそれらの“血の通わない”人間関係に対しても恐れと反発を抱いているといいます。

「それらの影響もあって、彼・彼女らは競争よりも協調を。消費よりもひとつのものを長く使う。そして大家族や人々の絆などハートウオーミングな物語を好みます。その流れで最近の女の子たちは、夏には浴衣を着て、うちわと打ち水で涼をとる。冬にはゆたんぽやコタツでぬくぬくしたい。バブル世代が高価なブランド品を好んだのとは正反対な価値観の持ち主なのです。むしろバブル期が昭和の持つ良いものを壊したという意識をもっています」(牛窪さん)

もちろん、実際は、昭和の時代は今より大きな所得格差があり、公害も深刻な問題になりました。けれども30年も経つと、すべては美しいイメージだけが先行するようです。

では、そんな昭和の情報をどこから得ているかというと。

「今の若い子は親と大変仲良しで『親ラブ族』とも言われています。これは東日本大震災以降、特に顕著なのですが、家族、特に大家族に憧れています。平成世代はひとりっ子が目立って増え、早く結婚したい、子供を持ちたいと思う人が多いのです。成人後も多くが親と同居していて、休日には一緒に買い物に行き母娘は服を共有しています。彼らにとって親(主にバブル世代)は平成世代の模範である一方で、憧れるのは親が幼少期を過ごした昭和の時代なのです」(牛窪さん)

例えば大型のテレビが普及して以降、リビングで親子一緒に番組を見る機会も増えているそうです。

「それまでは小型テレビを個室に持ち込むことで、ゲームなどオタク消費が隆盛でしたが、今の流れは違います。親世代と同じ番組を見て、一緒に笑えることを良しとするのです。だからいま、平野ノラのような昭和バブル芸が広い世代に受けているのでしょうね」(牛窪さん)

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二世代、三世代消費に企業も熱い視線を

二世代、三世代消費に企業も熱い視線を

一方で、「昭和」なアイテムでビジネスする企業の側にはこんな理由もあります。

「今の人口割合の中央値は47~48歳。つまり50歳前後が人口の中央に位置し、これからますます上の層ばかりが増えていきます。企業としては、人口が一番厚い層をターゲットに商売をしたいわけです。だから、真ん中の世代が懐かしさを感じる『昭和』を復刻させるのは理にかなっているのです。でも、それだけでなく、『昭和』をコンセプトにすると、20代も物珍しさからアラフィフ世代の親や上司と一緒に消費してくれます。つまり『昭和』なアイテムはリアルに昭和を過ごしてきた世代と、平成世代が消費体験を共有できる、という特徴をもっているのです」(牛窪さん)

しかも平成生まれが仲良しなのは親世代だけではありません。

「かつて子供の消費には両親とその両家の祖父母、合わせて『シックスポケット』があると言われましたが、その祖父母世代も、当たり前のように『昭和』レトロ消費に加わっているのです。こうして「昭和」をきっかけに対話が生まれ、ブームが世代間の懸け橋になっているわけです」(牛窪さん)

「平成生まれはバブル世代の大人のありようを忌み嫌いますが、一方で祖父母のようにカッコよく歳をとりたいとも言っています。以前、私が集中的に取材した際にも、20代の女性はバブル世代を飛び越えて、今の60~70代のような年齢の重ね方をしたいと言っていました。祖父母世代は、自分たちが知らない“失われた良きもの”を知っているため尊敬されるのです」(牛窪さん)

今の60~70代の青春こそまさに昭和の高度成長期。人々は夢や希望に燃え、前を向いて進みながらも、互いに手を取り合い、ひとつのものを分け合う術も知っていました。それこそ平成世代が憧れる世界なのです。

という訳で、「昭和ノスタルジー」が世代を繋ぐ大きな力をもっているとご理解いただけた読者諸兄には、ぜひこれを平成女子とコミュニケーションを深める効果的なツールとしてご活用いただきたく。昭和居酒屋でハイボール片手に古き良き昭和についての心温まるエピソードなど開陳すれば、彼女たちはあなたに信頼と尊敬のまなざしを向けつつ、強い親近感を抱いてくれるはず。

ただし、間違ってもバブル期のイケイケ自慢はなさらぬように。すべてが台無しですぞ。

● 牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)

世代・トレンド評論家、マーケティングライター、インフィニティ代表取締役。同志社大学・創造経済センター「ビッグデータ解析研究会」部員。「草食系(男子)」などを世に広める。『「男損」の時代―「熱メン」が人生をソンしない18の知恵』(潮出版社刊)など著書多数。テレビ出演も多い。

牛窪恵オフィシャルブログ「気分はバブリ~」
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◆ 歌京

住所/東京都港区麻布十番1-5-8 ヴェスタビル B1F
URL/
問い合わせ/☎03-3403-7255
●「歌京」は昭和歌謡を中心とした歌謡曲やJ-POPが流れる話題の懐メロダイニング。オーナーの岡田さんによれば「コンセプトは“大人が楽しめる2軒目”。お客さんは店内に飾ってある懐かしい本を読んだりグッズの写真を撮ったり。当時の音楽や映像を見て踊り出す人もいます。知っている人には懐かしく、知らない若い世代の人には新鮮に映るのでしょう」とのこと。「2年前の開店当初は、40代50代が客層のメインでしたが、今は30代のお客様も増えています」。上司に連れられて来てハマってしまう平成女子も多いのだそう。「うれしいのは当時のアイドルの方など芸能人の方にも多数来ていただけていることです。その時はご本人の曲をかけて店内で大盛り上がりになります」。すぐ近くの本店「十番右京」と同じ本格的な料理も楽しめます。

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