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2018.02.22

看板のない隠れ家バーで燗番娘が語る、燗酒のススメ

胃の腑からほっこりとあたたまる燗酒は冬季限定ではなく、むしろ春から夏がおすすめ!? 燗酒のたしなみを、東京・湯島の隠れ家バー「燗酒嘉肴 壺中」でお燗番を務める伊藤理絵さんがご指南。

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写真/吉澤健太 文/秋山 都

伊藤理絵さん
江戸の佇まいをいまに伝える東京・湯島の一角で、看板もなくひっそりとたたずむバー「燗酒嘉肴 壺中(以下壺中)」。酒呑みの間では伝説のように語られるこの店のウリは、お燗番の伊藤理絵さんがほどよくつける燗酒です。

「燗酒は冬の間だけのものだろ?」「ぬる燗がツウだよね」「やっぱり人肌でしょ」
その認識、本当に正しいのでしょうか? 理絵さん、教えてください!
一幅の絵のように美しく燗をつける伊藤理絵さん。スタイリストやライターを経て現職へ就いた異色のプロフィールを持つ。
一幅の絵のように美しく燗をつける伊藤理絵さん。スタイリストやライターを経て現職へ就いた異色のプロフィールを持つ。

「燗酒は一年中おいしい」

「まず勘違いされている方が多いのですが、『酒を冷(ひや)で』というときの『冷(ひや)』とは、常温のお酒であり、お酒を氷や冷蔵庫などで冷たくしてお出しするのは『冷(ひや)』ではありません。

1980年代のバブル期におこった吟醸酒ブームのおかげで香りを前面に強調したお酒が増えてきて、温めるとその香りが鼻につくため、冷たく冷やしたお酒が好まれるようになりましたが、『壺中』では、吟醸酒だとしても米・米麹のみで醸す純米吟醸・純米大吟醸のみを用い、香りが控えめなタイプをそろえているため、お燗にしてもむしろ旨味が引出され、花開きます。

一度しっかりと温めた後、50度、40度と下がった時も、それぞれの温度ならではの表情が感じられて、その変化を楽しむのもおすすめ。だから燗酒を楽しむのは冬だけではなく、春には春の、夏には夏のおいしい燗酒があるというわけです」

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「酒はぬるめの燗がいい」ってホント?

「やっぱりぬる燗がおいしいの?」

「酒は生き物ですから、季節や保管環境で、コンディションが変わります。そこを見計らい、どのようなスピードで何度まで熱を加え、1口目の温度を何度にするかなど、それぞれの酒に適した状態で仕上げる。ここが、燗の番人であるお燗番の出番です。
一種の燗酒を口の広い杯と狭い杯で飲み比べると、その香りの立ち方も味の広がり方も変化することに驚く。
一種の燗酒を口の広い杯と狭い杯で飲み比べると、その香りの立ち方も味の広がり方も変化することに驚く。
私の場合、お燗器にお湯を張り、銅製のチロリで温め、徳利と盃にもお湯を張り、仕上がりの温度を調整しています。たとえば、有機酸が豊富で熟成感があるタイプであれば、チロリに入れたお酒を、“順当なペース”で60度まで温めて、徳利と盃に入れたときも同じ温度になるようにし、重厚感を出しつつキリっと仕上げます。

すっきりと軽やかなタイプは、53度までに仕上げて、こちらもまた、徳利と盃をぬるめにしておき、やや温度が下がった状態でお出ししています。ほかにはあえて、徳利も盃も温めず、一気に10度近く下げるときも。お酒の状態に加えて、肴やお客さまの召し上がり具合をみながら、温度を決めています。

ぬる燗が40度前後、熱燗が50度前後と言われる中、なぜ、それより高い温度まで温めるのか? それは、そこまで温度を上げても”耐えられる酒”ならば、むしろ、しっかりとした輪郭が浮かび上がり、開くから。『竹鶴 純米にごり原酒・酸味一体』(竹鶴酒造)、『生酛のどぶ』(久保本家酒造)などの濁り酒は、70度まで温めることもあります。燗をすると旨味が増し、温度が下がっていく過程それぞれで、味わいの違いを遊べる。これぞ燗酒の魅力です」

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燗酒にはどんな肴が合うの?

「燗酒にはどんな肴が合うの?」

「『壺中』でお出ししている純米酒は“緩衝力”が高いため、肴を選びません。そしてその前後に飲むお酒も選ばないんです。つまり、お酒を飲んでから、ワインや蒸留酒へ移っても、またお酒に帰ってくるなど、“行ったり来たり”する飲み方もできるということ。実際に多くのお客さまが、ビールや、『生酛のどぶ』ソーダ割などの冷たいお酒を飲んでから、純米酒、そしてワイン、最後に蒸留酒など、それぞれのお酒のよいとこどりをされ、自由に肴を楽しまれています」
小皿で厳選された肴が供される「壺中」。和牛のコンビーフには「パーラー江古田」の黒胡椒とカシューナッツのパンが好相性。この日ほかに「生からすみ」など。
小皿で厳選された肴が供される「壺中」。和牛のコンビーフには「パーラー江古田」の黒胡椒とカシューナッツのパンが好相性。この日ほかに「生からすみ」など。
いかがでしょう。実際に理絵さんがつけてくれる燗酒は、いままで飲んできた燗酒とひと味もふた味も違う、繊細な味わいです。この日、この酒、そしてこの腹具合。まさに一期一会の出会いものを堪能できるバー「壺中」。アナタが燗酒をきちんと飲んだことない、というならここは最良のスタート地点になるだろうし、「ひと通り飲んだ」という方にはさらなる発見の場となるでしょう。
「壺中」は看板も電話もないため、わかりにくいのが難であり、魅力でもある店。住所から探してみて。
「壺中」は看板も電話もないため、わかりにくいのが難であり、魅力でもある店。住所から探してみて。

◆ 燗酒嘉肴 壺中

住所/東京都文京区湯島2-31-25 太陽ビル 1F
電話/なし
営業時間/16:30~22:30(L.O. 21:30)
定休日/日曜・月曜休
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