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2018.04.26

道を知る旅【2】岡崎コーナー

複数のメーカーから、筆者の名を冠して呼ばれるコーナーがある。クルマの力量を測るのにうってつけなこの道には、数々のエピソードが……。

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文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

複数のメーカーから「岡崎コーナー」と命名されたコーナーがある。

人によっては「岡崎リムタッチコーナー」とも呼ぶ。お恥ずかしながら、このコーナーに僕の名前がつくに至る経緯とその理由を、ご紹介しよう。

このコーナーは、3速全開(クルマによっては2速)で走り抜ける登りの左コーナーで、路面は複雑にうねっている。

サスペンションのバランスが悪いとすぐ挙動は乱れるし、タイヤへの負荷が非常に大きいのでタイヤもアゴを出す。このコーナーを上手くクリアできれば、とりあえず1次試験は合格!といった難コーナーだ。

先の見通しもいいので安心して追い込める。ゆえに、クルマにもタイヤにも、文字通り過大な負担がかかる。

僕がこのコーナーでの挙動を重視していることはメーカーも知っていた。だから、多くのメーカーは技術者が現地に赴き、実際に走り、そして路面を詳しくチェックしていた。

そして、このコーナーがクルマの力量を測る上で優れたツールになることを理解した。

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結果、テストコースにこのコーナーを再現したメーカーも複数ある。コーナー入口に「岡崎コーナー」と書かれた小さな看板を立てていたメーカーもあった。これには驚いた。

「これはやめましょうよ」「僕が考えて作ったわけでもないし、たまたまみつけただけですから…」と異を唱えた。しかし、担当者は「いや、重大な発見ですから、発見者に敬意を払うのは当然です」と一蹴された。もちろん、どちらも笑顔での応酬だが。

レーシングサーキットの場合、後々まで語り継がれるようなアクシデントが起こったコーナーを、自然発生的に当事者ドライバーの名前で呼ぶことが多い。だから「まるで、僕がこのコーナーで大事故でも起こしたようじゃないですか!」とも言ったが、これまた笑って流された。


初めにも触れたように、このコーナーを「岡崎リムタッチコーナー」と呼ぶ人たちもいる。

複雑にうねるコーナーでのタフなコーナリングに、外側前輪タイヤが耐えきれず、ホイールリムが直接路面に当たってしまったクルマがあったのだ。

信じられないこと、起こってはならないことが起こった。僕も驚いたがメーカーはもっと驚いただろう。タイヤとホイールを見れば、リムタッチが事実であることはわかるはずだが、開発担当者は「直接見ないと信じられない」と。

で、開発チームと一緒に現場へ。当然、僕が検証ドライバーを務めたのだが、1回目のライで「完璧なリムタッチ!」を起こしてしまった。検証はすぐ終わった。その後、リムタッチ車の開発チームがハードワークを強いられたことは想像に難くない。

ちなみに、「岡崎リムタッチコーナー」と名付けたのはそのチームであり、そのメーカーのテストコースにも再現路面が作られた。

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ところで、岡崎コーナーと呼ばれるのは登り坂だが、下り坂のコーナーとしてもまた面白い。下りだから当然スピードは乗るし、追い込むと当然ラインもピンポイントになる。

ある雑誌の仕事で、その下りをポルシェ911で駆け抜ける写真を撮ることになった。僕は気合いが入っていた。インパクトのある写真にしたかった。

そこで考えたのが「内側前輪リフト」。後輪を滑らせず、最大限の駆動力をかけて、911の内側前輪を浮かせようということだ。

すでに話したが、このコーナーは見通しがいいので心理的に楽だし、下りは路面の荒れもうねりもない。計算通り走れる。で、結果はどうだったかというと、1回目のトライから内側前輪は大きくリフトした。2回目のトライはさらに大きくリフトした。

怖いという感覚はまったくなかった。代わりに背筋がゾクゾクするような快感が全身を走った。「911は最高だ!」と改めて思った。

2回のトライで写真はしっかり撮れたとのことだったので、そこでトライは終えた。911から降りたら、観客(編集部員)は大喜びだった。「20cmくらい浮いていた!」「「いや、30cmくらい!」と大騒ぎだった。

道を知り、道と対話し、ときに道と遊び、道と戦うことは、僕にとってはとても重要なことだ。僕は道を意識し、道を知ることで、多くを学んだ。道は、楽しく実りある学舎だ。
●岡崎宏司/自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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