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2018.04.13

自動車写真家が撮る、美しいクルマ【6】

クルマの美を伝えるには、すべてを見せずに一部を際立たせるのが効果的

クルマ以外にも、時計やジュエリー、コスメなどの撮影を手がけ、フェティシズム溢れるスタジオ写真で、雑誌や広告を中心に活躍する岡村昌宏氏。そんな彼が、スタジオ撮影における心得を教えてくれました。

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写真/岡村昌宏 文/南陽一浩

複雑な面とさまざまなエッジで構成されるレクサス「LC」のリアまわりを、物撮りに通じる発想で切り取りとった1枚です
複雑な面とさまざまなエッジで構成されるレクサス「LC」のリアまわりを、物撮りに通じる発想で切り取りとった1枚です

これだと思うディテールには大胆に寄りましょう

「プロダクトとして見ると、クルマほど魅力的なものはそうありません。人は乗れるし、デザイン性は高いし、機能美や造形美などが絶妙なところでバランスしていますから」という岡村さん。

化粧品や時計の広告を多く手がけていたスタジオで腕を磨いた。その経験が現在に続くスタイルなのだそう。

「コスメや時計とスケールは違えども、クルマもガラスと鉄で出来た“光りモノ”じゃないか、という考え方でした。そのプロダクト美を通じて、“クルマは思っているより美しい”ことに気づいてもらいたいし、写真としても格好いいと感じてもらえる表現がしたい」

クルマの広告撮影はディテールを見せるため、白バックと言われる、白い壁(白ホリ)や白い板で囲んで光を回す手法が一般的だが、岡村さんの現場はほとんどが黒バックだ。

「シャドーが効いているところから少しずつ強調したい部分を選んで、ギュッと詰まった感じで撮りたいんです。美しさを感じるのに、ディテール全部を見せる必要はないですから」

これだと思うディテールには大胆に寄り、シャドウとグラデ―ションとエッジを映し込んで切り取る。

「屋外ロケでクルマを撮ることも多いですけど、このクルマのここは、スタジオでこう撮りたいなぁとか、いつも考えていますね」

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スタジオの撮影では光の流れや向きを意識

ボディの抑揚をモノクロの光と影で表現しました

仕事として納品した写真はカラーでしたが、後から趣味で白黒にした一枚。ボンネットからドアにかけて一度落ちて、もう一度もち上がるフェンダーライン。マフラーはサウンドの点でも、全体の輪郭の中でも重要なので、おこしています。

911ならではのディテールに思い切って寄りました

マイナーチェンジ前のポルシェ「911」。ルーフ後端からエンジンフードまでのリアの造形は、「911」が基本設計を変えずに進化してきたことを象徴するディテールです。いわば、この部分だけで911のエッセンスを語ることができる。だからこそ、思い切って寄ってみました。

斜め上からの強い光でボディの抑揚感を表現しました

スタジオの撮影では光の流れや向きを意識します。例えばこの作品では、メインライトを左上から入れることで、ボンネットからフェンダーにかけての「ミウラ」独特の抑揚感を浮かび上がらせています。スーパーカー世代なので、こうしたクルマにはつい気持ちが入ってしまいます。

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7:3より正面のアングルが好きな理由

複雑なディテールをハイライトと影のグラデーションで浮かび上がらせました

リアビューはクルマを表現するうえで大事なアングルです。特にレクサス「LC500」のお尻は色っぽい。グラマラスで筋肉質、エッジも立っていて、デザイン要素が複雑に入り組んでいます。なのに決して破綻していないところが素晴らしい。欲張って何が悪い?!という、今のレクサスのこだわりを感じさせる造形を、ハイライトと影のグラデーションで浮かび上がらせました。

被写体と正対することで、強調すべきポイントが見えてきます

いわゆる7:3より、クルマと正対するアングルが好きです。正面から見るとクルマは左右対称なので、片側に寄ることで強調できるものがある。フェラーリ「488」の場合は、このF1マシンのようなボンネットのえぐれです。

クルマの特性を象徴するディテールを切り取りましょう

マツダ「ロードスター」のライト周りには、全体の完成度を語れるディテールが忍び込んでいる。シャープな線と緩い線が共存しつつ、レクサスとは違うバランスがあります。

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真上からのライティングでプレスラインを際立たせる

時には大胆に目線をかえて見ると、新たな発見があります

最近のアウディのデザインは一見控えめに見えますが、細く入ったプレスラインは実はとてもエッジが効いていて鋭さが潜んでいます。この写真は、真上に近いアングルからプレスラインを際立たせるように光を入れました。ボディがシルバーだったので、まるでモノクロ写真のようになり、かえってデザインが強調される写真になりました。

● 岡村昌宏

大学を卒業後3年間、中央官庁の外郭団体に勤めていたという異色のフォトグラファー。その後スタジオ修行でコスメや時計などの撮影に携わる。クルマのプロダクト美をスタジオワークで引き出す第一人者として、メンズ誌やライフスタイル誌、自動車雑誌で表紙や連載を多数担当。現在もクルマ以外に、時計などのプロダクトの撮影をはじめ、人物や旅の写真などジャンルにとらわれる事なく幅広く撮影をしている。
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『自動車写真家が撮る、美しいクルマ』

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