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2018.04.12

自動車写真家が撮る、美しいクルマ【3】

クルマの写真はコントラストが効いている方が格好よく見えます

広告写真やポートレートの世界でキャリアをスタートさせ、今でも仕事の主軸はそちらだという峯竜也氏。クルマを撮影する際にも、フィルムカメラのネガ現像や焼き込みと同様の発想でデジタル処理に時間をかけるという。持ち味であるコントラストの効いた作品を作例にしながら、専門の自動車写家とは異なる視点で、撮影の心得を語ってもらった。

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写真/峯 竜也 文/南陽一浩

ロケ現場にたまたま通りがかった警官と一般の方に声をかけて、写真に入っていただきました。彼らが入り込むことで、作品に不思議な物語性が生まれる。現場では、こういう機転も大切なのです。
ロケ現場にたまたま通りがかった警官と一般の方に声をかけて、写真に入っていただきました。彼らが入り込むことで、作品に不思議な物語性が生まれる。現場では、こういう機転も大切なのです。

ハプニングをも見方につける意識が大切です

「今もそうですが、じつは僕の仕事の割合でクルマの撮影は少ないんです。クルマは専門の写真家が撮るというイメージもありましたし。クルマをクルマとして撮らない、広告と違ってわりと自由度の高い、そういう雑誌から声かけてもらったのが、クルマを撮影するようになったきっかけです」と、峯さん。

70年代カルチャーが好きで、当時の映画や海外の雑誌ビジュアルにインスパイアされた自分のスタイルを、「パンチあるものが好きで、撮る本人はそうじゃないのに写真は目立ちたがり」と語る。

「物撮りでもポートレートでもジュエリーでも、もちろんクルマでも、自分にしか撮れない写真になるように撮ることを身上としています。被写体のたたずまいから滲み出るものというか、その背後にいる人の存在が感じられるような。メッセージ性の強い、ただ撮っただけではない写真を心がけています」

銀塩の時代、ネガ現像や焼き込みでコントラストや色調をコントロールするテクニックを駆使していた峯さんは、デジタルの時代になってからも画像処理には時間をかける。

「基本的には、デジタル処理はアナログでやっていたことの延長感覚でやっています。およそクルマの写真はコントラスト、パンチが効いているほうが格好よく見えるものです。およそデジタル処理はその方向で行いますね」

「現場で事前に考えていたことと違うことは多々あります。だから現場では画面に入り込むことでむしろ面白くなることはないかと、いわばハプニングのようなことを探しています」

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焼き込みや画像処理で色を重ねて被写体を際立たせる

カメラカーのフェンダーを入れ込むことで特別感を醸し出しました

「CG」の50周年記念号で「乗らずに死ねるか」という企画で、コブラ2台を岡山で撮ったのがこちら。被写体はもちろん、手前のフェンダー、つまりカメラカーも本物のコブラというぜいたくな一枚です。

グラマラスなラインを強調するため、コントラストも彩度も上げました

当時、「月刊プレイボーイ」の「もっともセクシーなクルマ選び」という特集で、8×10という大判カメラを用い、ネガ現像してプリントを焼き込んだもの。「ジネッタ」のグラマラスなラインを強調するため、コントラストも彩度も上げています。

クルマのサイドを見せる場合、手前より奥が明るい方が気持ちよく見えます

BMW「3.0CSiL」をローアングルからとらえました。クルマのサイドを見せる場合、手前より奥が明るい方が気持ちよく見えます。ネガで撮影して焼き込んでいて、ハイライト周辺はやや赤を、シャドーは青や緑を重ねて被写体を際立たせています。

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小動物みたいなトゥインゴに警官をからめた意味

独特なデザインを浮かび上がらせるためのプロならではのテクニック

2017年、「カーグラフィック(CG)」のために撮り下ろしたシトロエン「C3」。デザインが独特なので、その特徴が浮かび上がるよう、ストロボを手持ちして強調したい箇所を照らしてはシャッターを切り、また別の箇所を照らしてはシャッターを切り……。そうして撮った数枚の写真を、レタッチ段階で空の色を調整しながら、一枚にしています。

通りすがりの人物を入れ込むことでストーリー性が生まれます

浅草の有名な映画館の廃墟前で、1996年にハッセルブラッドで撮りました。まだ大らかな時代で、小動物みたいな初代ルノー「トゥインゴ」に警官が絡んだら?と思い、お願いしたら快く引き受けてくれて。通りすがりの二人が来て完成、そんな2枚組です。

レフ板による強めの光でアルミの質感を強調しました

「CG」の初仕事の時、「リスター・ジャガー」のエンジンをローアングルから撮ったカットです。ボンネットカウルを跳ね上げた時の、臓物感というか、アルミの質感を出すためにレフ光を、ポイント的に強めに入れました。

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彩度のコントロールが作品をドラマチックにする

強いブレ感で疾走感を荒削りに表現しました

「NAVI」の初仕事で撮影した「R34スカイラインGT-R」と「GTS」。キレイなシチュエーションに置いて撮るのでなく、疾走感を粗削りに表現するという方向性でした。強いブレ感を出しつつ、モノクロで焼き込んで深みを出しています。

路面の彩度を落とすことで赤い内装色を際立たせました

クルマは「911カブリオレ」で、女性の編集者の髪が気持ちよくなびいているところ。道の向こうがブラインドコーナーで山に挟まれていて、理想的なカットが撮れました。内装の赤や、周りの緑がキレイなので、路面はほぼ白黒まで彩度を落としています。

望遠レンズと三脚で、クルマと流れる人とのコントラストを強調しました

ロータス「エヴォーラ400」を300mmの望遠レンズで撮影。手持ちでも撮れたかもしれないですが、クルマが少しでもブレたら、ただの下手な写真になってしまう。人の流れに対してクルマを静止させるべく、三脚を使いました。背景の東京駅の壁は彩度を下げています。

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アナログカメラで合成のような写真を撮る方法

鉄ボディの雰囲気を出すためにあえてモノクロで撮りました

メルセデス・ベンツ「G550 4×4-2」。鉄ボディの雰囲気を出すためにあえてモノクロにしてみました。サスペンションがツインショックであることが横アングルでないと分からないのですが、このクルマの力強さがより伝わる正面寄りのアングルで撮った一枚です。

多重露光による撮影で合成写真のような表現を試みました

これ、誰もが合成だと思うんですけど、「GQ Japan」の撮影で、発表会の展示車両を4×5の大判カメラを用いて多重露光して撮影したもの。ボンネットを閉じたところは、何パターンか撮り、映り込み具合のいちばんいいものを選びました。

面白いアングルを見つけ出す視線が大切です

ホンダマガジンの仕事で、「2&4」という先の東京モーターショーで発表されたコンセプトカーを撮影。アングルによっては、60年代のホンダF1を想わせるようなたたずまいだったので、それを表現すべく少し俯瞰気味にリア周りを見せながら狙いました。

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“丁寧に光をコントロール”

ライティングの目的を意識する

こちらも「2&4」です。背後からメインのバウンス光で浮かび上がらせつつ、手前側がフラットになり過ぎないよう構造やメカニズムを見せています。エンジンルームの備えつけのライトが利くよう、全体の光量を調節していますね。

● 峯 竜也

広告の制作会社に10年勤めた後に独立。主にポートレートや広告の物撮りを手がけ続ける。1990年代後半より雑誌「Avant」や「NAVI」でクルマを撮り始め、「カーグラフィック(CG)」のような老舗専門誌でも活躍。日本写真芸術専門学校でスタジオライティングを教える講師でもある。

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『自動車写真家が撮る、美しいクルマ』

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【2】クルマの走行シーンの撮影は、脳内シミュレーションが大切です
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