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2018.03.19

いいオトコが愛したクルマたち。オトコはクルマとどう付き合うべきか?

オトコにとってクルマとは? 白洲次郎、伊丹十三、高倉健、スティーブ・マックイーン、チャーチル、ジョン・レノンのクルマ遍歴からオトコとクルマの関係に迫ります。

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文/持田慎司 イラスト/Isaku Goto

オトコにとってクルマとはどういう存在か? 昔から繰り返し語られるこの永遠のテーマについて、モータージャーナリストの小川フミオさんに話を伺いました。クルマ好きとして知られる著名人の愛車遍歴を例に挙げながら辿ったオトコとクルマの関係性とは?

オトコにとってクルマは自分を表現する道具

歴史上、クルマ好きの著名人と言えば、日本人なら白洲次郎や伊丹十三の名前が思い出されます。イギリスに留学経験もある実業家の白洲はそこでクルマの楽しみを知り、一方、映画監督を父にもちながら自身も映画監督など多彩な才能を見せた伊丹も海外で生活した経験を『ヨーロッパ退屈日記』というエッセーに残しています。ふたりは共にクルマによって自分を表現しようとした人でした。当時彼らにとっては、クルマ=外国だったのです。彼らは外国車の魅力を我々日本人に広めてくれた先駆けのような存在でした。
白洲次郎は、イギリスを象徴するベントレーに乗っていましたし、ブガッティでレースに参戦したりもしています。70歳をすぎてもポルシェに乗っていたなんて逸話も残っています。たくさん写真も残っているけど、実にカッコいい。

また、伊丹も当時新興だったロータスがF1に参戦して速くてカッコいいから自分もロータスに乗ってみようとか。その頃はあまり外国の知識がなかった僕たちにとっては、伊丹が “世界に開いた窓のひとつ”だった。彼を通してヨーロッパのことを勉強したし、彼が乗っていたクルマがカッコ良かったんです。
シトロエン2CV。1949~1990年まで生産されたフランスの小型乗用車。2CVは2馬力とも訳されるが実際は排気量に応じた当時のフランスの課税馬力を意味している。非力ではあったが機能性と優れた居住性で国民車のように広く愛された。
伊丹が乗っていたクルマで一番有名なのはシトロエンの2CVですが、それ以外にもジャガーやロータス・エラン、ルノー16、そしてポルシェの911などにも乗っています。外見はフツウのセダンに見えて実は速いというクルマを形容する“羊の皮を被った狼”という言葉がありますが、これを日本に初めて紹介したのも彼だったのではないでしょうか。
伊丹のエッセーの中では、どんなクルマに乗るべきか、ということだけでなく、どう運転するべきかまで書かれています。ほかにも食事やファッションから、女の子のエスコートの仕方まで記されていて、ライフスタイルの一部としてしっかりクルマが存在している。
男って、こういう時計が付けられるようになったからこういうクルマ、こういう家に住むようになったからこんなクルマとか、そういうトータルでライフスタイルを考えるのがカッコイイという価値観がありますよね。伊丹が伝えたかったのもそういうことではないでしょうか。

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外国車が次元を超えた特別な存在だったころ

外国車が次元を超えた特別な存在だったころ

昔は外国車が今のように一般的ではありませんでした。1964年までは厳しい輸入規制があったことと、日本人の所得と為替の関係もあり、映画スターとか一部の人だけしか乗れなかった。50年代当時、主演級のスターだと、だいたい映画1本の出演料が200万円ぐらいだったのではないでしょうか。なかには年間に20本とか出演する俳優もいるわけです。当時は50万円もしないで家が一軒買えた時代ですから、それこそ宇宙船だって買えるような感覚です(笑)。
以前、自動車評論家の徳大寺有恒さんに伺った話ですが、昔、環七に芸能人のたまり場の店があって、力道山や小林旭がクルマに乗って来ていたそうです。メルセデスの300SLとかも駐車場に停まっていたらしいのですが、一般のお客さんたちは誰もそのクルマの値段を聞かなかった。徳大寺さんの言葉を借りると「誰がスペースシャトルの値段を知りたいと思う?」と(笑)。そのくらい、当時の日本人にとって外国車というは、自分たちとは無縁の別次元の存在だったのでしょうね。
ポルシェ356Aカブリオレ。356は製品名にポルシェを冠した最初の自動車。高性能かつ実用的な小型スポーツカーとして、その後の世界のスポーツカーの指標となった。356Aカブリオレは1958年から59年にかけて生産された。
少し遅れてやってきたとはいえ、高倉健もすごくたくさんの種類のクルマに乗っていたようです。真っ赤なポルシェ356Aカブリオレは有名ですが、最後はメルセデスのAMGに乗っていたという記録が残っています。速いクルマをたくさん乗り継いでいて、運転が好きだったんでしょうね。スティーブ・マックイーンに憧れていたなんて記述もありましたけど。まだ外国車が一般的ではなかった時代を含めて、自分の目で良いクルマ選びができていた、審美眼も素晴らしいと思います。

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運転が上手くても下手でもクルマ好きはいる

運転が上手くても下手でもクルマ好きはいる

スティーブ・マックイーンもクルマ好きで名高いひとりです。コブラとかジャガーのXKSSとかスポーツカーに乗っている写真がいろいろ残っていますが、マックイーンの愛車遍歴がカッコ良く見えるのは、ライフスタイルのなかにクルマが溶け込んでいたからじゃないでしょうか。彼が、買ったクルマで必ずレースに参戦していた1950~60 年代は、街で走れてレースにも出られるクルマをスポーツカーと呼んだんです。そういう意味で本当にスポーツカーを楽しんだのがマックイーンというわけですね。
逆に運転はうまくないけどクルマ好きだったともいわれているのが、ウィンストン・チャーチルです。20年代からさまざまなクルマに乗っているんですが、本人は運転が大雑把だったと読んだことがあります。クルマのメカニズムが頭に入っていないまま乱暴に運転するので、いつもクルマのギアが欠けちゃっていた、なんて逸話が残っているくらいですから(笑)。
彼が愛したのは基本、英国車で、ランドローバーがチャーチルに1948年に寄贈した第1号車と一緒に写っている有名な写真が残っています。そして最後に乗っていたのは、バンデンプラ・プリンセス4リッターやハンバーのプルマンだったようです。自分で運転するより助手席とか後席を好んだのは年齢からいってしょうがないですね。
ランドローバー第1号車。戦前から乗用車を手がけていたローバー社が、1948年、ジープのようなクロスカントリー型4WDに商機を見て製造。

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クルマなんかどうでみい、という付き合い方も

クルマなんかどうでもいい、という付き合い方も

これらのクルマ好きとまったく違う態度でクルマと接していた著名人といえば、ジョン・レノンではないでしょうか。ビートルズの他のメンバー、ポールやジョージが当時からいろいろなクルマを乗り回していたのに対し、“ジョンは自分のクルマにさほど興味がなかった”とポールが自伝の中で語っています。フェラーリを買ったこともあると当時の妻のシンシアが回想録に書いていますが、彼は周囲の他のセレブリティのように、クルマをステイタスのシンボルとしては見ていなかったんだろうなぁと思います。その辺が“らしい”というか。

“庶民”の買うクルマではなかったロールス・ロイスのファントムを手に入れて、それにサイケデリックというかすごいペイントをしたのは痛快でした。英国では老人たちからは大不評だったというのも、ジョンにとっては痛快だったのでは。ブラックユーモアが得意な人だったようですから。
つまり、他のクルマ好きとは違って“クルマに自体に興味がない”のがジョンのスタイル。究極的には“クルマなんてこだわるな”という考え方ってありますよね。むしろどんなクルマでも自分が乗ればカッコイイんだという。ジョンはまさにそれで、あくまで自分が主役の考え方だったのではないでしょうか。
ロールス・ロイス・ファントムV。ファントムはロールス・ロイスの最上級サルーン。ジョンのクルマは、カナダの「ロイヤル・ブリティッシュ・コロンビア博物館」に収蔵、展示されている。

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自分のライフスタイルを映し出す鏡としてのクルマ選び

自分のライフスタイルを映し出す鏡としてのクルマ選び

ここに取り上げた人たちは、所有する目的や意識は違っても、ライフスタイルのなかにクルマが溶け込んでいるからカッコよく見えるのだと思います。徳大寺さんが「クルマは買っても売っても損をする」と言ってましたが、リセールバリューばかり考えたり、家族がいるからSUV、みたいな実用一辺倒じゃなくて、自分が好きだからスポーツカーに乗っているって方が、よほどカッコよく見えると思いませんか。
快適さや実用性よりも自己表現としてのクルマ選びができること。自分のライフスタイルを映し出す鏡のような存在としてクルマを選べることが、彼らとクルマの関係をより魅力的なものにしていたのだと思います。最近の若い人たちはクルマに関心のない人が多いというけれど、なかには80年代の国産車を苦労しながら乗ってるような人もいますよね。そういうクルマとの付き合い方が失われずに続いていくといいなと思います。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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