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2018.03.12

かつて、クルマといえばオーダーメイドが当たり前だった?!

ロールス・ロイスの「ビスポークプログラム」やベントレーの「マリナー」をはじめ、昨今、プレミアムブランドがクルマに一家言ある富裕層たちのために、こぞって本格的なビスポークサービスを展開している。しかし、クルマの歴史を振り返れば、そもそもオーダーメイドが上がり前だった。ここでは、クラシックカーの時代から現代にいたるまで、クルマにおけるビスポークの世界をひも解く。

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文/小川フミオ

ロンドンのウェストミンスターに1805年に創業したコーチビルダー「HOOPER」。ロールス・ロイスやベントレーなど名車のボディを手がけてきたが1959年に廃業。写真はクラシックカーの祭典「グッドウッド・リバイバル 2014」でロールス・ロイスがHOOPERのショップを復活させたもの。
ロンドンのウェストミンスターに1805年に創業したコーチビルダー「HOOPER」。ロールス・ロイスやベントレーなど名車のボディを手がけてきたが1959年に廃業。写真はクラシックカーの祭典「グッドウッド・リバイバル 2014」でロールス・ロイスがHOOPERのショップを復活させたもの。

エンジン付きのシャシーが販売されていた

クルマ好きの最大の夢は“好きなクルマ”を作りあげることだろう。しかし、クルマが誕生したときから1910年代までは、クルマはオーダーメイドが当たり前だった。

ロールス・ロイスを例にとると,販売されていたのはエンジンつきシャシー。欧米を中心した顧客はそれに自分好みの車体を載せていた。

戦前のロールス・ロイスがクラシックカーのイベントに出展されるときは、必ず誰がボディ製作を手がけたが銘記される。馬車(コーチ)時代から続くやりかたで、彼らは英国ではコーチビルダーと呼ばれた。

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クルマのビスポークビジネスを支えていたのはハリウッドだった

戦前のハリウッドスター、フレッド・アステアが特注したロールス・ロイス「ファントムⅠ」。ボディ後端に搭載されたルイ・ヴィトンのトランクが馬車時代の名残を感じさせる
戦前のハリウッドスター、フレッド・アステアが特注したロールス・ロイス「ファントムⅠ」。ボディ後端に搭載されたルイ・ヴィトンのトランクが馬車時代の名残を感じさせる

クルマのビスポークビジネスを支えていたのはハリウッドだった

デザインはまさにさまざま。大きなリムジンタイプが欲しい人は長いシャシーを購入して、贅を凝らした内装材で後席を仕立てた。自分で運転するのを好む人はもう少し軽快で、シートも総革張りのツアラーに、といった具合だ。
1920年代のベントレー「3 Litre」。ボディ後端がすぼまった“トーピドー”と呼ばれるボディをまとっている
1920年代のベントレー「3 Litre」。ボディ後端がすぼまった“トーピドー”と呼ばれるボディをまとっている
スタイリッシュでスポーティな2シーターがいい走り屋もいて、そういう人にはボディ後端がすぼまった“トーピドー”なる魚雷型のボディが好まれた。すべて1920年代ぐらいの話だけれど。これらのビジネスを支えていたのはハリウッドだ。

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70年代、富裕層が愛用したシューティングブレークとは?

1965年にデビューしたアストンマーティンのGTクーペ「DB6」をベースにつくられたシューティングブレーク
1965年にデビューしたアストンマーティンのGTクーペ「DB6」をベースにつくられたシューティングブレーク

70年代、富裕層が愛用したシューティングブレークとは?

クルマの車体の構造が変わり、モノコックといって車体だけ載せることができなくなった後も、英国のコーチビルダーは1970年代まで生き残った。主にスポーツクーペに大きな荷室をつけたシューティングブレークというクルマを富裕層のために製造していた。
こちらはアストンマーティン「V8クーペ」ベースのシューティングブレーク。3台のみが製作された
こちらはアストンマーティン「V8クーペ」ベースのシューティングブレーク。3台のみが製作された
アストンマーティンなどの車体後部を改造して狩りの道具を積めるようにしたシューティングブレーク。この言葉は近年、メルセデス・ベンツが使用したりしているので、覚えておいていいキーワードかもしれない。

もちろん、カラーや内装素材だけでも、自分の好きなクルマに仕立てられたら、とてもぜいたくなことだ。

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ビスポークサービスの現在形

ロールス・ロイスがある上顧客のためにファントム・クーペをベースに4年の歳月をかけて完成させた、たった1台のスペシャルモデル「スウェップテイル」。まさに1点モノのビスポークモデルだ
ロールス・ロイスがある上顧客のためにファントム・クーペをベースに4年の歳月をかけて完成させた、たった1台のスペシャルモデル「スウェップテイル」。まさに1点モノのビスポークモデルだ

ビスポークサービスの現在形

僕は1980年代にドイツのポルシェ本社を訪ねた際、特別注文の部署を見せてもらったことがある。911を自分好みの色や内装にしたいという顧客が少なからずいるというのに驚いた。

「ガールフレンドのマニュキュアを持参して、同じ色に塗った車体のクルマを誕生日プレゼントに、というケースもあります」。担当者はそう説明してくれた。
ビスポークならば、こんなインパクトのある仕上げにすることも可能。写真はロールス・ロイス「ドーン」
ビスポークならば、こんなインパクトのある仕上げにすることも可能。写真はロールス・ロイス「ドーン」
いまプレミアムブランドは「ビスポーク」(ご存知、洋服の注文仕立てのこと)というサービスを始めている。だいたい2つに分かれているようだ。

1つは選択の幅の広さ。現代のロールスロイスを例にとると「(ファントム)パレット」という特別仕立ての仕様が用意されている。それでは満足できないという客には「ビスポークプログラム」がある。
ベントレーが展開するビスポークサービス「マリナー」では、ベンテイガをベースにラグジュアリーなピクニックを楽しむための仕様も用意されている
ベントレーが展開するビスポークサービス「マリナー」では、ベンテイガをベースにラグジュアリーなピクニックを楽しむための仕様も用意されている
内装素材は顧客のイメージを聞いたうえで、できるだけ理想に近いものに仕上げる。セダンの場合、後席を(昔の高級車のように)シルク張りにしたりするクラシックなものから、ファーで埋め尽くしたようなものまで。

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ビスポークの際はデザイナーがアドバイスしてくれる

ジャガー・ランドローバーが英国に開設したビスポーク部門「スペシャルビークルオペレーション(SVO)」
ジャガー・ランドローバーが英国に開設したビスポーク部門「スペシャルビークルオペレーション(SVO)」

ビスポークの際はデザイナーがアドバイスしてくれる

僕はジャガー・ランドローバーが英国に開設したビスポーク部門(スペシャルビークルオペレーションと呼ばれる)に行ったときは、立派なプレゼンテーションルームに驚いた。ディフェンダーのビスポーク仕様とか、けっこういいものがあった。
「SVO」のプレゼンテーションルームでは、豊富なカラーサンプルを実際に手に取り、デザイナーにアドバイスを受けながら選ぶことができる
「SVO」のプレゼンテーションルームでは、豊富なカラーサンプルを実際に手に取り、デザイナーにアドバイスを受けながら選ぶことができる
インテリアの素材やカラーもデザイナーも同様。シートなどに刺繍を施すことも可能だ
インテリアの素材やカラーもデザイナーも同様。シートなどに刺繍を施すことも可能だ
クルマの歴史や素材の組合せをある程度知らないと、なかなか“尊敬”してもらえる仕様が作れなさそうだ。「でも大丈夫」。そう語っていたのは、ジャガー・ランドローバーSVOの担当者だった。
仕様が決定したクルマは1台1台、手作業で仕上げられる
仕様が決定したクルマは1台1台、手作業で仕上げられる
「ビスポークのオーダーはキャンセルができません。なので失敗だと思われないよう、車両のデザイナーがここに常駐して、顧客の相談にのることにしています」

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道具としてのクルマの最高のかたちがビスポーク

ジョン・レノンが特注したロールス・ロイス「ファントム Ⅴ」
ジョン・レノンが特注したロールス・ロイス「ファントム Ⅴ」

道具としてのクルマの最高のかたちがビスポーク

ビスポークを成功させるには、価値観が(グローバルに)共有できることが大事だ。そもそもは自己満足なのだが、モノがクルマという社会的な存在である以上、外部とのつながりが生まれてくる。

ビスポークをやれるぐらいの人なら、当然、各地からゲストを迎えて、自慢のクルマに乗せることもあるだろう。その際、なぜこの仕様にしたのか(できれば一瞬で)理解してもらえたら、そのビスポークは成功といえる。

スーツのビスポークの最大のポイントは、いかにフィットしているかにある。クルマの場合、注文主の価値観がいかにクルマ好きの世界観にフィットするかが重要なのだ。
イエローのベースカラーにペイズリー模様が描かれたボディはインパクト大
イエローのベースカラーにペイズリー模様が描かれたボディはインパクト大
もちろん、俳優やラッパーといった有名人だったら、自己表現もビスポークの範疇にいれていい。古くなるけれど、ジョン・レノンが作らせたペイズリー模様のロールスロイス・ファントムVが好例だ。

ジョン・レノンはスピーカーをつけていて、通行人が近寄ってくると「あっち行け」などと大きな音声で流し、びっくりするのを見て楽しんでいたとか。それはどうかと思うけれど、道具としてのクルマの最高のかたちがビスポークであるということだ。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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