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2017.08.21

80年代、ドライブには鈴木英人とカセットテープだった

80年代、ドライブといえば欠かせなかったのが、お気に入りの曲をつめこんだカセットテープでした。その思い出をFMステーション元編集長が語ります。

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文/恩藏 茂(『FMステーション』元編集長)

2013年11月号より
80年代前半、録音も編集も手軽にできるカセットテープの登場でFM放送のリスナーが若い世代にも広がり、空前のFMエアチェックブームが起こりました。懐かしきオーディオ・カセットテープの記憶と時代の空気を、鈴木英人のイラストを鍵に『FMステーション』元編集長、恩藏茂氏が綴る。
1981年から1998年まで隔週で発行された『FMステーション』。附録のカセットテープケースレーベルが人気を博した。
オーディオ・カセットテープは、音楽を室内から解放し、街へ、リゾートへと持ち歩けるものに変えた画期的なメディアでした。同時に、FMの聴き方も変えたのです。それまでFMは、クラシック、ジャズ、イージーリスニングを主体とした大人の音楽放送局でした。番組を録音するにはオープンリール・デッキを用いたのですが、操作がなかなか面倒でした。
ところが、録音も編集も手軽にできるカセットテープの登場によってリスナー層が広がり、それに応じて若い世代向けのポップスや最新ヒット曲をかけるプログラムがふえていった。そうしてFMエアチェックのブームが起こったのが80年代前半のことです。
エアチェックに便利な番組表を掲載したFM雑誌が、どんどん部数を伸ばしました。81年創刊の最後発誌『FMステーション』は、アメリカ西海岸の風景とクルマを描いた鈴木英人氏の表紙イラストが若い世代の人気を集め、中・高校生の読者・リスナー層を開拓しました。

英人氏のイラストは、山下達郎の82年のアルバム『FOR YOU』のジャケットにも使用され、流行の〝シティリゾート・ミュージック〟のおしゃれなイメージにぴったりでした。ドライブに持っていくテープには、『FMステーション』の綴じ込み附録「鈴木英人イラストレーベル」がよく似合ったのです。
80年代の音楽シーンが鮮やかに蘇る恩藏さんの著書『FM雑誌と僕らの80年代—「FMステーション」青春記』(河出書房新社刊)
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ドライブにBGMは欠かせません。誰もが「ドライブ・ミュージック」と題したオリジナルテープを何本も持っていたはずです。リゾートへ向かうときには達郎や大瀧詠一、ハイウェイをぶっ飛ばすにはディープ・パープルの『ハイウェイ・スター』など疾走感あふれるハードロック(スピードの出しすぎに注意)。自分で選曲・編集したオリジナルのコンピレーションテープはセンスの見せどころでした。
曲順に気を配るのはもちろんです。連続して流れると、嫌が応にも盛り上がる曲の並びがある。前の曲のエンディングに同じコードで始まる曲のイントロをかぶせてノンストップでつなぐという高度な技が〝決まった〟ときのうれしさは言いようがありません。この曲のつぎにこれが来るか、という意外性も、選曲には必要です。
だからといって、ブライアン・フェリーの『トウキョウ・ジョー』、JAPANの『ライフ・イン・トウキョウ』、YMO『テクノポリス』、ボン・ジョヴィ『TOKYOロード』などを集めた、国際都市(インターナショナルシティ)・東京をテーマにしたおしゃれな選曲のテープに吉幾三の『俺ら東京さ行ぐだ』を入れるようなマネをしては絶対にいけません。ジョークのつもりでも助手席の彼女は引くし、いざ聴いてみると自分でも恥ずかしくなること請け合いです。せいぜいジュリーの『TOKIO』まででしょう。
選曲に胸ときめかせ、凝りに凝った構成を考えて編集したコンピレーションテープ、RECボタンとポーズ・ボタンを駆使してCMをカットしながら録音したエアチェックテープ。FM雑誌からレーベルを切り取り、タイトルをインレタで転写してオリジナルテープを完成させる作業に夢中になったのは、アナログの楽しみを知る最後の世代です。デジタル時代の現在、音楽の聴き方もすっかりさま変わりしました。
しかし、音楽それ自体が変わったわけではない。名曲は時代を超えると言いますが、ポップスである以上、どんな曲も時代と切り離すことはできません。いくらNHKの連ドラのおかげで80年代ブームが起ころうと、リアルタイムで聴いていた者だけが、その背景や記憶を含め、トータルなものとして聴くことができるのです。
若い世代に迎合してはいけません。夢中になって音楽と向き合っていたあの頃のように、現在のお気に入りの曲を集めて、それを聴くためだけにドライブに出かけようではありませんか。

● 恩藏 茂

FM雑誌としては後発ながら、最盛期には発行部数40万部を超えたといわれる伝説の雑誌『FMステーション』元編集長。著書に『ビートルズ カバーソングの聴き方』(河出書房新社刊)、『ビートルズ愛の事典』(ユーリード出版刊)など多数。

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