2017.08.18

生涯で唯一「儲かったクルマ」

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文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽 

21才の頃、いすゞがノックダウン生産していたヒルマン・ミンクスを買った。ルノー・4CVに次ぐ愛車第2号。19才の時には買えなかったが、21才でようやく手に入れた。
 
生まれは英国だから当然だが、「外車に見えた!」し、ルノー・4CVより格上だ。
 
ルノーも2トーンに塗ったが、ヒルマン・ミンクスのオリジナルカラー、モスグリーン&オフホワイト、サーモンピンク&オフホワイトのツートーンには強く惹かれていた。
 
 
買ったのはもちろん中古車。4~5年落ちの。
 
色はサーモンピンク&オフホワイト。コンディションはけっこうよかった。
 
父親の知人の所有車だったが、手放すとの話しを耳にした。そこですぐ父親に仲介を頼んだ。「安くしてもらって!」とも頼んだ。
 
父親を介した作戦は成功!万歳を叫びたくなるほど安く譲ってもらえた。
 
華やかだが、同時に英国生まれらしく、どこか上品な佇まいもなかなかのものだった。
 
周りからも「いいクルマに乗ってるね!」といわれた。ハッピーだった。
当然、しばらくは乗るつもりだった。
 
ところが、買って2~3日後に予期しないことが起きた。たまたま出会った友人の兄が、なぜか僕のミンクスをえらく気に入り、「俺に譲ってくれ!」と大迫力で迫ってきた。
 
買ったばかりだし、その気もない僕は防戦に必死。その場は切り抜けたが、なんとその夜電話がかかってきた。「あれからあちこち当たってみたんだけど、その色の売り物ないんだよ。相場にちょっと色つけるから頼むよ!」と、もう懇願状態なのだ。困った!
 
 
電話口で「うーん」と唸っていた僕の頭に悪魔の囁きが・・・。悪魔はこう囁いた。
 
「なぁ、お前はずいぶんと安く買ったんだろう。で、ほしいって頼んでいる相手は”相場に色つける”って言ってるんだから、儲かるぞ!」と。この囁きは効いた。
 
で、相手に「いくらで買って頂けるんですか?」と聞いた。うろ覚えだが返事は「40万円」くらいだったと思う。その瞬間「15万円儲かる!」「次のクルマを格上げできる!」とひらめいた。せこい話しだが、当時の僕に15万円は巨額だった。
 
 
結局、ヒルマン・ミンクスと過ごしたのは1週間! これに並ぶ記録も近い記録もない。
 
大損したクルマは数あれど、「儲かったクルマ!」は後にも先にもこれ1台きり。クルマを手放す時、査定金額を聞く度に、この1件を思いだす。
 
●岡崎宏司/自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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