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2019.09.06

「GT-R NISMO」2020年モデルの乗り味は?

価格は2420万円! 究極の「GT-R」は何が違うのか

2014年に初めて登場して以来、究極の「GT-R」として話題を集めてきた「GT-R NISMO」。GT-Rデビュー(1969年)から50年のアニバーサリーイヤーに発表された2020年モデルの価格は、なんと2420万円。先代より一気に600万円高となったニューモデルの実力とは?

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文/島下 泰久(モータージャーナリスト)

記事提供/東洋経済ONLINE
(写真:日産自動車)
価格は2420万円 ── 。まさに究極のGT-Rの登場である。ニッサンGT-R NISMOの2020年モデルは、2017年に登場した先代の1870万200円から、一気に600万円近くも跳ね上がった驚きの価格で世に出た。

実は今年はGT-Rのアニバーサリーイヤーである。1969年、いわゆる“ハコスカ”の時代に初代スカイラインGT-Rがデビューしてから50年、そして1989年に長いブランクを経て第2世代GT-Rとして今も根強い人気を誇るR32型スカイラインGT-Rが登場してから30年という節目の年なのだ。

スカイラインの名が外れたニッサンGT-Rとして、第3世代に当たる現行モデルが世に出たのは2007年。もう12年も前の話となるが、このタイミングでGT-Rはマイナーチェンジを敢行し、2020年モデルへと進化した。とくに今回のモデルでは、冒頭のGT-R NISMOに大きく手が入れられている。
▲7月にドイツのベルリンにあるDEKRAラウジッツリングサーキットにて、Nissan GT-R NISMO 2020年モデルのグローバル試乗会が開催された(写真:日産自動車)
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開発陣の確固たる哲学

2014年に登場した最初のGT-R NISMOは、高性能車の速さの指標であるドイツ ニュルブルクリンク北コースで7分8秒679という、当時としては驚異的なラップタイムを叩き出した存在である。

しかしながら新型GT-R NISMO、実は前回2017年のマイナーチェンジに続いて今回も600psという最高出力は変わっていない。高性能車を取り巻く状況は刻々と変化していて、今や600psという数字も驚くほどではなくなっているが、その背景には開発陣の確固たる哲学があった。

「出力は同じでもエンジンのレスポンスは徹底的に向上させました。また接地性を高めるタイヤ、サスペンション、空力、そして制動力を引き上げるブレーキの改良で、600psをさらに容易に引き出せるクルマに仕上げたんです」

そう語るのは、まさに2014年モデルからGT-R、GT-R NISMOの開発責任者の任についた日産自動車の商品企画本部 チーフ・プロダクト・スペシャリストの田村宏志氏である。

実際、今回の新型では、V型6気筒3.8・ツインターボエンジンにレスポンスを向上させる新しいターボチャージャーが採用され、制動力と耐フェード性に優れるうえに軽量化にも貢献するカーボンセラミックブレーキを採用。ボディーパネルにもカーボン素材がふんだんに使われ軽量化を実現し、さらに空力性能の向上、サスペンションの再セッティングを行ない……と、非常に多岐にわたる領域で改良が施されている。一見、驚きの値上げだが、こうして内容を見ていくと、法外だなどとは思えなくなる。
(写真:日産自動車)
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実に“軽やか”なGT-R

ましてや実際に走らせてみれば、その威力を即座に理解できる。アクセル操作に対してエンジンが忠実に反応するから、600psを持て余すことなく自在に引き出すことができる。もちろん速さ自体は圧倒的なだけに簡単なわけではないが、決してじゃじゃ馬ではない。

しかもブレーキがまたすばらしい。制動力は強烈の一言だし、コントロール性も抜群。そのうえ、600psの加速から一転、ハードブレーキングを何度繰り返してもフェードの気配をまったく見せないのである。

コーナリングの一体感も格段に高まっている。簡単に後輪が滑り出すようなことはなく安定しているのに、ステアリング操作に対して忠実によく曲がる。軽さが効いているのだろう。限界域でのグラッと傾くような挙動がなくなり、実に軽やかなのだ。まさかGT-Rに軽やかという言葉を使う日が来るとは……と、なんだか感慨深い気持ちになってしまった。

600psという最高出力は変わらないが、新型GT-R NISMOは間違いなくその速さに磨きをかけている。しかしながら今回、ニュルブルクリンク北コースでのラップタイムは発表されていない。聞けば、計測自体もしていないのだという。実際には計測はしていても、タイムを狙った走りはしていないということだろうか。
(写真:日産自動車)
確かに今は、中国だけでなくドイツのメーカーまで、レーシングカーのようなEVを持ち込んで記録した速いタイムを喧伝している時代である。新しいGT-R NISMOがいいラップタイムを出したとしても、世間の注目度は、例えば2007年にニッサンGT-Rがデビューした頃のようには高くないだろう。そもそもタイムだけを狙った改良というわけでもないだけに、敢えて計測しないほうが、かえってメッセージは明快かもしれない。

それにしても、12年である。スーパースポーツカーは大抵、モデルチェンジのスパンが長めとなるものではあるが、GT-Rが例外的に長寿であることは間違いない。何しろ当時、仮想敵としたポルシェ911はすでに次の次の世代へと移り変わっているぐらいなのだから。

ただし、その間に開発責任者は代わり、GT-Rというクルマのあり方も変化している。現在の田村宏志氏は実は2001年の東京モーターショーで発表された今のGT-Rの姿を暗示した存在であるGT-Rコンセプトを企画した人物だ。
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「進化はずっとさせていく」

2014年モデルより開発責任者の任につくと、GT-Rの「GT」すなわちグランツーリスモとしての面をベースモデルが、そして「R」すなわちレーシングの面をこのNISMOが担うという今の布陣が敷かれた。
それまでは1台のモデルでGT領域もR領域もカバーしていたが、それを突き詰めるとGTカーとしてはスパルタンに過ぎ、速さを狙うには中途半端ということになりかねなかった。こうなったのは必然だったと言っていい。

その後、2017年モデルではベースモデルが大幅改良。GTとしての質を引き上げ、また同時に動力性能も引き上げて、決して軟弱になったわけではないということも示した。そして今回の2020年モデルでは、NISMOにより多くの力が割かれた形だ。

「進化はずっとさせようと思っています。2020年モデルで、という考えは薄っすらとはありましたが、何をやるとは決めていなくて、ブレーキは足かけ5~6年、新しいタービンは3年くらいと、いろいろなソリューションを温めておきながらお客様のリアクションを見て最終的に方向性を決心する形でした。

(ベースモデルとNISMO)の両方いっぺんにはできないですね。でも相互関係はしっかりあって、例えば今回カーボンセラミックブレーキでバネ下が軽くなって、結果として乗り心地もよくなった。それは今後、基準車にも応用させられるでしょう。基準車を進化させればNISMOもよくなるし、その逆もないと意味がないので」(田村氏)
(写真:日産自動車)
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そんなGT-Rだが、前述のように登場から12年となれば、現行モデルは今後どうするのか、あるいはそろそろ次期型を……といった話は当然出てくる。未来は、見通せているのだろうか?

「自分が居続ける限りは、あれもやりたいこれもやりたいって言うんですが、一方で人生観として、いつどうなるかわからないという思いはあって。なのでつねにこれが最後だと考えて、2014年も2017年も、今回の2020年も仕上げています」(田村氏)

販売実績は決して悪くないGT-R

驚くべきことにニッサンGT-R、デビューからこれだけ経った今も、セールスは決して低調ではない。デビュー翌年がピークであることは事実だが、ここ5年ほどを見てもグローバル販売台数は平均して3000台近くに達しているのだ。もちろん価格帯などは異なるとは言え、ランボルギーニの年間販売が3モデル合計で約4500台と考えると、決して悪い数字ではないことが解るはずだ。
(写真:日産自動車)
しかもこの2020年モデルのGT-R NISMO、すでに今年の分は完売状態だという。価格が発表される前から、すでに熱狂的なファンが列を成していたのである。

これだけのファンがいるGT-Rはすでに1つの“ブランド”。ニッサンは活用しなければ損というものだし、それはまたファンに対する義務と言ってもいいだろう。現行モデルはまだまだ最前線で戦える実力を備えているだけに、今後しばらくは十分に継続できるはず。あるいは一時噂のあったこのプラットフォームを使った高性能SUVというアイデアも、いまだ有効だろう。

個人的には、そうやって現行のハードウェアを当面フルに活用しつつ、その間にじっくりと時代の先を読んだまったく新しい姿のGT-Rの姿を示してくれたら……と、やはり思わずにはいられない。今、まさにどん底のニッサンがまた這い上がってきたときに象徴となるような1台。期待したっていいはずだ。ましてGT-R 50周年の今年である。「検討を始めました」という一文のリリースですら、熱狂を巻き起こせるに違いないと思うのだが……。
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当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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