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2019.08.09

馬力じゃなくてセンスです!? スズキ「4代目ジムニー」、発売1年後の通信簿

昨年7月、20年ぶりのフルモデルチェンジをとげたスズキ4代目ジムニーが、本格4輪駆動車にもかかわらず年間2万台と好調に売り上げを伸ばしている。馬力や速さで優れているわけでもないジムニーがなぜ売れるのか。その人気の秘密に迫った。

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文/御堀 直嗣(モータージャーナリスト)

記事提供/東洋経済ONLINE
発売から1年が経ったスズキの軽4輪駆動車「ジムニー」(撮影:尾形文繁)
昨年7月に、20年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたスズキの軽4輪(4WD)駆動車「ジムニー」が、発売から1年が経過した。

一般社団法人の全国軽自動車協会連合会(全軽自協)による5月の通称名別新車販売速報の乗用車ベスト15で、ジムニーは12位の成績だ。トップは、いうまでもなくホンダN-BOXで、次いで、スペーシア、デイズ、タント、ムーヴとハイトワゴンが続く。

ちなみに、スズキの軽SUVであるハスラーは9位である。これら数字から見ると、ジムニーの販売実績はまずまずと言えても、それほど驚くべき数値ではないかのように見える。
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発売1年足らずで2万台超を販売

だが、悪路走破性を備えた本格4輪駆動車という、登録車でいえばトヨタ・ランドクルーザーや三菱自動車パジェロのような車種であることを考えると、相当な人気を得ているようだ。実際、パジェロに関しては国内での販売終了に追い込まれる事態となっている。

スズキ広報に問い合わせたところ、昨年7月以降のジムニーの販売台数が明らかになった。発売が開始された同月にいきなり5000台を販売し、対前年比524%のプラスを記録。8月以降はやや落ち着きを取り戻すが、対前年比200%前後で推移する。

新年になると再び販売台数は上昇し、今年2月には2900台超、3月は4000台弱、4月は約2600台で、5月に至る。ジムニーの年間販売目標台数は1万5000台であり、5月までの11カ月の累計販売台数は2万台を超えている。

顧客の傾向を調べると、新規が多く、また女性の購入者が増えているのも特徴といえるようだ。スズキには、SUVのハスラーがあるが、どちらも指名買いであり、互いを食い合うことにもなっていない。

そのハスラーも、発売から5年が経つが、今日なお対前年比100%前後を維持しており、販売が落ちていないことを示している。ジムニーもハスラーも、好調かつ堅調な販売の推移となっている。SUV人気は、登録車における近年の人気傾向につながる側面が考えられるが、本格的4輪駆動車のジムニーがなぜそこまで高い人気を得ているのだろうか。
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一番の人気の理由は「見栄え」

ジムニーの人気を支えているのは、外観の造形であるとスズキ側は説明する。次いで、雪道や悪路での走行性能、さらには運転の楽しさであるという。本格的4輪駆動車であれば、ジムニーはほかに類を見ない軽自動車でもあるので、雪道や悪路での走行性能が最も高い購買の動機であってもよさそうだが、一番は見栄えであるという結果に、ジムニー人気の秘密がありそうだ
1970年に誕生した初代ジムニー(撮影:尾形文繁)
初代ジムニーは、軽自動車で唯一の本格的4輪駆動車として1970年に誕生した。発端は、スズキの現会長である鈴木修氏が常務時代に、「もっと軽の特徴を生かせる独創的なクルマはできないものか」と示唆したことによるとされる。そして「360ccの軽でジープをつくる」との開発テーマが与えられた。1968年のことだ。そこからわずか2年で初代ジムニーは発売された。

翌1971年には、2人乗りのスポーツカーであるフロンテクーペも登場している。それらを含め、軽自動車の商品構成が拡充され、スズキは1973年に軽自動車市場で念願の首位を勝ち得た。

その後も、当時の主流な軽乗用車の価格が65万円前後だった時代に、47万円という驚きの価格でアルトが誕生したのが1975年のこと。当初の販売計画は月5000台だったが、実際にはその3倍以上を売り上げた。

スズキが年間100万台という販売規模に回復した原動力の1つが、ジムニーであった。そのジムニーは、まさしくアメリカのジープなどと遜色ない悪路走破性を備えており、軽といえども本格的な実力に対し消費者の信頼は確固たるものとなった。これに対抗し、三菱自からパジェロミニが1994年に誕生するが、2012年には生産を終了している。

1990年前後の日本はバブル経済期であり、ジムニーもパジェロミニも販売を拡大した。だが、ジムニーといえどもそれ以後はそれほど販売台数が多かったわけではない。それでも、ほぼ安定して年間1万台を超える販売の数字は維持し、それが4代目となる新型ジムニーの年間販売目標である1万5000台を導き出したのだろう。

それは国内市場に限った話であり、海外を含めると新型が出る前に3万台前後は維持しており、その数字もジムニーが長寿を保つことに貢献してきたに違いない。海外においても、ことに山岳地帯では道幅が限られ、世界で唯一の軽自動車規格という特殊な車体寸法が、道を選ばず自在に前進することのできるクルマへの期待や逞しさを覚えさせたに違いない。
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豊富な車体カラー、人気は緑と黒

新型ジムニーの人気の理由のいちばんが、外観の造形であることの意味は、そうしたジムニーの愛好家たち、また新規の顧客にとっても重要な意味を持っている。そもそも、軽自動車のジープを作るという鈴木修会長の発想から生まれたジムニーではあったが、初代以降、世代を経るごとにその姿はジープらしさが失われていった。

それでも2代目までは、まだほろを用いる車種が存在したが、3代目ではいわゆるパジェロ的に鋼板の車体のみの設定となり、外観の造形もより乗用車的になった。しかしそれも、1990年代に起きた、当時のいすゞビッグホーンや三菱パジェロ的なものを追いかけた結果であり、その時代には最適な造形であったはずだ。

そこから20年近くを経過する間に、軽自動車でありながら本格的4輪駆動性能を備えるジムニーの個性が見えにくくなったのも事実だろう。そこを、性能のみならず外観的にも原点回帰したのが新型ジムニーといえる。
4代目ジムニーの車内(撮影:尾形文繁)
さらには車体色を豊富にそろえる中、カーキ色や黒など本格派の色もそろえた。街でお洒落に乗りたい人へも、未舗装の悪路を目指す人にも、自らの嗜好を示すことのできる車体色を用意した。

販売台数における車体色の人気は、1~2位が緑と黒ではあるが、3位にアイボリーの明るい色が選ばれている。訴求色となった新色の黄色はベスト3には入らなかったが、それでもその印象的な色遣いは人々の目をジムニーに向けさせる点で効果があったはずだ。

もう1つ、筆者の周りでも、年配でマニュアルシフトのジムニーを購入、または購入検討をしている人がいる。いずれも、運転を楽しみたい思いとともに、昨今のペダル踏み間違い事故などへの懸念が、マニュアルシフトを選ばせる結果となっている。

マニュアルシフトの場合、前進と後退ではそもそもシフトすべき位置がまったく異なり、なおかつ、クラッチ操作を丁寧に行わなければエンジン停止(エンスト)を起こすので、前進にしても後退にしても発進には慎重を期すことになる。万一、逆方向へ動き出したら、ブレーキペダルを踏むだけでなくクラッチを切ればそれ以上速度を上げることはない。実際、新型ジムニーの販売の約3割はマニュアルシフトである。
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速いだけがクルマの楽しみではない

運転の楽しさにおいても、単に高い速度を出せばいいとか、急加速の醍醐味を味わいたいというのとは別の味わいがある。悪路走破のためやや柔らかなサスペンション設定によって、ゆったり運転することが求められ、それでいながら1つひとつのクルマの動きを体で確かめながら、路面との対話を手応えとして実感しつつ運転するところに、クル
ジムニーシエラ(写真/スズキ)
そういう運転の喜びをジムニーは味わわせてくれる。それはかつて、若かりし頃に運手免許証を取得した時代のクルマの性能や運転の仕方に通じ、懐かしくもありいとおしいのである。

年齢が若くても事業で成功すれば輸入車のスポーツカーを手に入れられる時代である。一方で、環境の時代といわれる21世紀は、大きくて力強く上昇志向ではなく、身近な暮らしの中の快さを喜びにつなげることでうれしさを覚える人たちも増えている。そうした生活実感に、ジムニーは適合する側面を持つのだろう。

何百馬力ものエンジンを搭載し、太いタイヤを装着して爆走するだけがクルマの楽しみではないということに思いを寄せる人の姿が、老若男女の隔てなく、ジムニーとジムニーシエラの販売動向に重なって見える。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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