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2019.06.08


マツダ「新型MAZDA3」のデザインは何が売りか?

流れるような美しいデザインが話題のマツダ「新型MAZDA3(マツダ3)」。ファストバックとセダン、2つのボディタイプで異なるテーマを見事に実現した新型車の魅力に迫った。

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文・写真/森口 将之(モビリティジャーナリスト)

記事提供 / 東洋経済ONLINE
5月24日に発売されたマツダ3のファストバックとセダン(写真/尾形文繁)
ここまで話題豊富な新型車も珍しい。5月24日に国内向けに発売されたマツダの新型車「MAZDA3(マツダ3)」のことだ。

まず車名が変わった。マツダ3のルーツは1963年にデビューしたファミリアで、2003年から翌年にかけて、商用車登録のバンを除きアクセラにスイッチした。それがこの世代から、マツダ・ブランドであることを強調するために、欧米と同じマツダ3というネーミングで日本も売っていくことになった。

ボディが2種類であるのはアクセラ時代と同じだ。しかしセダンがそのままなのに対し、ハッチバックは従来のスポーツからファストバックに呼び名が変わっている。

ファストバックの歴史

ファストバックは1960年代のフォード「マスタング」あたりから使い始めた言葉で、ルーフからリヤウインドゥにかけてなだらかなスロープでつなぎ、空気抵抗の少ない、スピード感のあるスタイリングとしたものだ。

近年はアウディやホンダがこのスタイルを多用しており、少し前に日本に導入されたプジョー「508」もこの言葉を使っていた。いずれも実用重視のセダンやハッチバックとの差別化を図りたいという目的があるようだ。マツダ3も似たような考えから、ファストバックと名乗ったのだろう。
きれいに仕立てられたドア開口部
ニュースリリースでもパーソナルカーという言葉を使っており、ほかのセダンやハッチバックとは違うことをアピールしたいようだ。

しかもファストバックとセダンとではデザインが大きく異なる。共通なのは2725mmのホイールベースとボンネット、グリル、ヘッドランプ、ウインドスクリーンなどに留まり、ドアは前後ともに違うし、ルーフのカーブの具合も異なる。

ニュースリリースでも、ファストバックは「色気のある塊」、セダンは「凛とした伸びやかさ」という異なるテーマを掲げている。
ファストバックのリアクォーターとドアハンドル
チーフデザイナーの土田康剛氏によると、この差別化は2015年の東京モーターショーに出展されたコンセプトカー「RXビジョン」、2年後の東京モーターショーでお披露目された「ビジョン・クーペ」と関係があるという。

2台のコンセプトカーは、世界で高く評価されている魂動(こどう)デザインをさらに深化させるべく、日本の美意識に基づく「引き算の美学」、つまり過剰をそぎ落とし、滑らかな面が表現する繊細な光の移ろいによって豊かな生命感を表現することに力感が置かれていた。
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2つのマツダ3に見る方向性の違い

土田氏はマツダ3そのものだけでなく、この2台で提案した引き算の美学をどう市販車に落とし込むかというプロジェクトにも関わった。その結果出した答えは、2台のコンセプトカーに共通する「艶」と「凛」の共有は継承しつつ、ファストバックはRXビジョンと同じように艶やかさ重視、セダンはビジョン・クーペがそうであったように凛とした部分を強調するというものだった。

たしかに2つのマツダ3のエクステリアを見比べると、方向性が違う。ファストバックはボディサイドにキャラクターラインがなく、面で魅せる印象が強いのに対し、セダンは長い間クルマの基本形として認められてきた形であることから、水平基調を強め、前後フェンダーなどにラインを追加している。
フェンダーにキャラクターラインが入るセダン
線ではなく面で魅せる。言葉でいうのは簡単だが、作るのは大変だ。キャラクターラインがあったほうが、パネルを合わせるのが楽だからだ。そこでマツダ3では、従来はドアやフェンダーなど別々に行っていた品質管理を、一体で進めることにしたという。

それでもプロトタイプを生産現場の人たちに見せたときには驚かれたそうだが、嫌とは言われなかった。現行ロードスターのリヤフェンダーの深い絞りもそうだが、マツダの生産現場の人たちには、やってやろうという意気がある。同等の形を生み出すのに、欧州のプレミアムブランドでは5回のプレスが必要なところ、マツダは3回で済んだというエピソードも聞いた。
マツダは魂動デザインの導入に際し、欧米の自動車メーカーではデザイナーと差をつけていた生産現場の待遇を、同等レベルにまで引き上げたという証言もある。これもやる気の源泉になっているのだろう。さらに筆者は広報スタッフから「いちばん生産現場に通ったデザイナー」と土田氏を紹介されており、デザイナーがこの形の実現に並々ならぬ熱意を抱いていたことがわかる。

2つのボディは全長も大きく違う。先代に当たるアクセラのセダンはロングノーズ・ショートデッキを強調した結果、売り上げは伸び悩んだということから、80mm伸ばした4660mmとなった。一方のファストバックは逆に、4460mmとアクセラ・スポーツより10mm短い。

こうなるとフラッグシップセダンのアテンザとのバッティングが気になるところだが、マツダは5月9日に行った2019年3月期の決算発表で、直列6気筒エンジンと縦置きパワートレーンの投入を明らかにしており、これが次期アテンザ(マツダ6に改称される可能性もある)になりそうなので、差別化は自然に図れるだろう。
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“ストイック”という言葉さえ思い浮かぶ

驚いたのはディテールへのこだわりだ。例えばドアハンドルはパーツの切れ目がない一体成形としてあるし、ドアを開けると見えるピラーやサイドシルは溶接跡をきれいに整形してあり、フロアの補強メンバーは一直線に入っている。ストイックという言葉さえ思い浮かぶほどだ。
新色のポリメタルグレーメタリックをまとうファストバック
ボディカラーはおなじみのソウルレッドクリスタルメタリック、最近の推しであるマシーングレープレミアムメタリックに加え、ファストバック専用色として新開発のポリメタルグレーメタリックを設定。金属の質感を出すアルミフレークと樹脂の滑らかさを出す不透明な顔料を混ぜ合わせたことで、光の移ろいで変わる陰影を楽しむファストバックにふさわしい色になっていた。

インテリアもまた引き算の美学を展開している。ただし最初に形ありきではなく、配置の適正化から考えた。運転席は左右対称とし、ドライバーが見たり触れたりする対象の焦点を等距離とした。ドアとセンターコンソールのアームレストの高さもそろえている。
以前から取り組んできたドライビングポジションについても、マツダ3ではステアリングを前後させるテレスコピックの調節代を拡大し、シートリフターは踵から尻までの距離を一定に保つ動きに変え、シートクッション前端のチルト調整機構の追加などを行っている。

インパネにガーニッシュと呼ばれる装飾パネルを使わないことも、引き算の美学の具現化の1つ。その代わり、シルバーの帯を全周に回して、バスタブに浸かっているような心地よさを出したそうだ。スイッチについては触感を0.01mmの単位で調節し、ボタンを押す際の心臓の動きまで計測したというのがマツダらしい。

夜間のイルミネーションをホワイトで統一したことも特徴だ。正確な色を見せるという目的もあるが、派手な色を用いた一部のプレミアムブランドへの対抗という意味も伝わってきた。
ファストバックのバーガンディレザーインテリア
ファストバックは視界に難がありそうに見えるが、実際はAピラーを細くしており、ワイパーをボンネット下に配置したことも効いていて、前方向はむしろ優れていると感じた。後方については、ミラーで見える範囲は同等をキープしたという。室内空間はこのクラスの平均レベルで、身長170cmの自分なら後席にも楽に座れる。

インテリアカラーはブラックを基調に、セダンはホワイト、ファストバックはバーガンディのレザーを用意した。バーガンディはブルゴーニュの英語読みであり、ワインレッドに近い落ち着いた色調だった。
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遮音やオーディオへのこだわり

遮音についても、マツダ3では独特の研究成果を取り込んでいる。単に静かにするのではなく、心地よさを重視するという方向性で、入力の振動とそれにより発する音のタイムラグが大きいと不快になることを突き止め、穴を減らすとともに、鉄は音を減衰しないので、特殊な樹脂を使用して減衰をしたという。

こうした空間に対応して、オーディオにもこだわった。「マツダ・ハーモニック・アコースティックス」と名付けたそれは、低音を担当するスピーカーは指向性が気にならないので、前輪とキャビンを離したスカイアクティブ・テクノロジーで余裕が生まれたドアの前に埋め込み、中高音を担当するスピーカーはドア上方とピラー根元に取り付け、反射音ではなく直接聞かせるようにした。サウンドデザインと呼んでいい取り組みだ。
発表会場に展示された歴代ファミリア
これ以外にBOSEのシステムも用意しており、スピーカー数はオリジナルが8個、BOSEが12個と差はあるのだが、BOSEは彼らの考えに基づいて音作りをしており、人によって好みがあるので、上下関係とは考えていないとのこと。言葉の向こうに「BOSEに負けない」という気持ちがうかがえた。

走りについては、人が自分の足で歩いているかのような走りを目指したスカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー、ディーゼルとガソリンの良さを兼ね備えたというスカイアクティブXエンジンなど、こちらも話題に事欠かないが、走り出す前からここまで語れるというのは、ベースモデルが210万円台のクルマとしてはすごい。あえてマツダ3と車名まで変えてきた理由が理解できた。
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です

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