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2019.05.12

最高にキモチいい! 公道のF1マシン、マクラーレン720Sスパイダーに乗った

クルマにはいろいろな仕事がある。人や物を運ぶのは勿論のこと、今日では環境、未来への責任まで負っている。だが、いつになろうとも純粋な「走り」への渇望は止まらない。それを体現しつづけるマクラーレンの最新マシンに乗った。

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取材・文/小川フミオ

F1マシンを思わせる構造のマクラーレン720Sスパイダー

スポーツカーはやっぱりつねに心を騒がせる存在だ。なかでも英国のマクラーレンは、スタイルと性能ともに際立っている。さきごろ発売された720Sスパイダーは、サーキットで楽しめるモデルであるいっぽう、街中でもかなり映える。

スポーツカーには”着る”という表現がある。マクラーレン720Sスパイダーはまさに”着る”ように乗れるモデルだ。シートのフィット感はもちろん、4つのタイヤが自分のからだの一部になったような操縦感覚は、いま流行りのeスポーツを凌駕している(と思う)。
全長は4543ミリで堂々とした存在感がある
720Sスパイダーは、マクラーレンの3つのカテゴリー「スポーツシリーズ」「スーパーシリーズ」それにサーキット専用ともいえる「アルティメットシリーズ」のなかで二番めのスーパAーシリーズに属する。

私はクーペ版の720Sには日本と英国で試乗したことがある。クルマの運転はいつも楽しいものだが、幸福な気分になれることは珍しい。720Sはその希有な幸福感を堪能させてくれるモデルだ。

720Sスパイダーにも、クーペのDNAはきちんと引き継がれている。車名のとおり720馬力の4リッターV8エンジンをミドシップする2人乗りのスポーツカーであり、最大トルクもクーペと同様770Nmもあり、そうとうパワフルである。

カーボンファイバーを使った「カーボンモノケージⅡ-S」というボディ構造はF1マシンを思わせるもので、軽量と高剛性を両立させている。Aピラーまで一体構造としているのが特徴だ。
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ブレーキング時にスポイラーが立ち上がりエアブレーキの役目を果たす
オープンボディのためルーフ部分で強度を高めることは出来ないが、「その必要はありませんでした」と試乗会場で出合ったマクラーレンの開発者は言っていた。

オープンモデルはルーフの開閉構造やボディの補強で、ベースになる車両よりだいぶ重くなるのが常だが、クーペより49キロしか重量が増していない。1332キロという車重は、たとえばフェラーリ488スパイダー(1420キロ)よりだいぶ軽い。

ユニークな技術は、そこかしこで見つけることが出来る。「スパイダーなので快適性も重視しました」とメーカーじしんが言うように、ルーフまわりも凝っている。まずボタンを押せば11秒で(ほぼ)フルオープンになる機構。マクラーレンによると「スーパーカークラス最速」という。
フルオープン時もこの「フライングバットレス」は残りエアをエンジンルームに導入する役割を果たす
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静止から時速100キロまで加速するのにわずか2.9秒

もうひとつは「エレクトロクロミック」と呼ばれるガラスパネルがルーフに組み込まれていることだ。乗員の頭上にあたる部分に採用されていて、ボタンひとつでほぼ透明から濃いスモークまで濃度が変わる。ルーフを閉めていてもオープンの気分が堪能できるのだ。

そもそもルーフまわりの設計は空力的に考え抜かれたものという。「フライングバットレス(バットレス=桁)」と名づけられた小さなクォーターピラーのような構造が運転席背後に設けられている。

ルーフが開閉するときのガイドの役目も果たすと同時に、エンジンルームへ冷却気を導入する役目を果たす。速く泳ぐ魚類を思わせる720Sスパイダーのボディ側面には、大きなエアインレットは設けられていない。滑らかな美しさが強調されているいっぽうで、ぱっと見にはわからない部分に工夫が凝らされているのだ。
野球のグラブを連想させるレザーとステッチを与えられた仕様
走りは眼がさめるようなシャープさが際立つ。7500rpmで720馬力(530kW)の最高出力に達し、770Nmの最大トルクも5500rpmからと高回転型エンジンのフィールはすばらしい。吹け上がりがよく、回転計の針が時計を高速回転で回しているようないきおいで上に右がわに回っていくのと並行して、からだで感じる加速Gもはんぱない。

英国のカントリーロードでは1930ミリ(ミラー両端を入れると2161ミリ)の車幅ゆえ、思いきって楽しむのはむずかしいが、試乗した米国はポテンシャルを味わうのにいい場所だった。

フリーウェイでは周囲のクルマが好意的に道を空けてくれるため(米国人はクルマ好きなので)ロケット的な加速を味わえる。静止から時速100キロまで加速するのにわずか2.9秒というのだ。
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エレクトロクロミック・グラスを透明にするとほとんどオープンの感覚だ
スポーツモードを使うと、アクセルを強く踏み込んでいるときには、シフトアップ時に自動的にエンジン回転を一瞬上げてギアのつながりをスムーズにしてくれる機構が働き、パンッパンッと空砲をうつような威勢のいい音を楽しめる。

ワインディングロードは、720Sスパイダーが本領を発揮するもうひとつの場所だ。地面に吸いつくように走り、ドライバーが見た方向へとノーズは瞬時に向きを変える感覚である。ピレリPゼロのグリップ力の高さもあり、安全マージンは高い。

感心したのは、路面に砂利が浮いている山岳路をドライブしたときだ。言うまでもなく、加速には細心の注意を払ったが、乗り心地への影響はほぼない。サーキット向けの硬い設定のはずだけれど、不快感はゼロに近いのである。
カーボンファイバーの構造のためドア開口部を大きくとっても剛性は確保されている
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「アクティブリアスポイラー」は高速でのダウンフォースを必要とするときに作動するとともに、高めの速度で制動をかけると立ち上がってエアブレーキの役目を果たす。ブレーキランプが点灯するとともに、スポイラーがスクリーンのように立ち上がるのは、ちょっとした見ものでもある。

室内もマクラーレンでしか手に入らないモダンデザインで構成されている。ディヒドラルドアという前ヒンジで上に跳ね上がるマクラーレンのトレードマークになったドアは大きく開くので、スカートの女性でも乗り降りは楽だ。

室内ではサポート性のいいシートとともに、レザーがぜいたくにダッシュボードを包むぜいたくさが味わえる。エンジンをスタートさせると格納式のメーターナセルが電動で立ち上がり、車両の情報が表示されるのだ。

センターダッシュボードには8インチの液晶画面を使ったインフォテイメント用のスクリーンがはめこまれている。そのとなりに、一般的な「ノーマル」、運転を積極的に楽しみたいときの「スポーツ」、そしてサーキット向けの「トラック」というドライブモード切り換えスイッチが設けられいて、クルマのさまざまなキャラクターを楽しめるのだ。

720Sスパイダーの価格は3788万8000円。このクルマでないと手に入らない世界への入場料だ。それを喜んで払うひとが世界中に少なからずいるという事実こそ、マクラーレンの魅力のまたとない証明なのだ。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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