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2019.03.10

知ってる? フェラーリが始めた楽しいコト

フェラーリが発表した「イコーナ」という新ビジネスは、刻々と変わりゆく現代のクルマカルチャーに、古きよき時代のラグジュアリーなクルマの楽しみを蘇らせたものといえるだろう。その内容を子細にみながら、今後のクルマの向かう先を考察する。

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取材・文/小川フミオ

往年のレーシングモデルを彷彿させる大きなヘッドレストが特徴的だ(2018年9月のパリ自動車ショーにて)
一般車はEV、高級車はワンオフ、というのがこれからの自動車のありかたになるのだろうか。ワンオフとはオーダーメイドという意味で、戦前から富裕層にとっては当たり前の付き合い方だった。

戦前では、メーカーはシャシーとエンジンを販売し、買い手はそれを車体屋に持ちこんで、好みの仕上げにするのが常だった。スポーティなクルマが欲しいときには、ショートホイールベースにパワフルでコンパクトなエンジンを選び、クーペボディを得意とするボディメーカーに車体製作を依頼した。

フェラーリが2018年に発表した「イコーナ」というビジネスは、ワンオフの”伝統”を復活させるものだ。もちろんフェラーリのような高級ブランドは、ずっとワンオフを手がけてきてはいたが、今回はメーカー主導で台数限定のスポーツカーを製造し、選ばれた顧客に販売する。それを大きな柱の一つにしていきたい、と同社ではしているのである。
レーシングマシンのようなコクピットにベルルッティのレザー張りシートが備わるショーモデル
皮切りが2018年9月にお披露目された「モンツァSP1」と「モンツァSP2」だ。フロントエンジンと後輪駆動という伝統的なレイアウトを守り、往年のレーシングフェラーリにインスパイアされたというボディを被せているのが特徴である。

2019年2月に東京にも持ちこまれたモンツァSP1は、50年代に活躍したレーシングフェラーリをイメージしたシングルシーターだ。低いオープンボディは、バルケッタ(小舟)と呼ばれる伝統的なスタイルで、そこに往年のクルマのような大きなヘッドレストを備えている。

サーキットで知られる北イタリアのモンツァを車名に使ったのも、50年代のレーシングモデル「750モンツァ」や「860モンツァ」を意識してのことという。だ。デザインを手がけたフェラーリのスタイリングセンターでは、前後タイヤの存在感を際立たせつつ、表面にはうまく抑揚をつけ、エレガントさも盛り込んでいる。
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従来のようなウィンドシールドは持たずバーチャルウィンドシールドなる機構が備わる
といっても、たんに懐古的なモデルではない。フェラーリではF1マシンの技術を応用している。そのひとつが炭素樹脂で作られたシャシーとボディだ。堅牢性と軽量性で群を抜く炭素樹脂はそのぶん高価だが、惜しげもなく使われている。

810馬力という超強力な6.5リッターV型12気筒エンジンを搭載している。静止から時速100キロに加速するのに要する時間は2.9秒であり、最高速は時速300キロを超えるとフェラーリではする。

フェラーリが作るだけあって、雰囲気だけで終わっていないというのが商品的な価値なのだ。新しさでいうと、バーチャルウィンドシールドも特筆すべき技術だろう。通常のクルマのようにウィンドシールドを持たないSP1では、コクピット前に空力付加物を設けて、風がドライバーの頭上へと流れるように工夫されている。

50年代のレーシングカーはあまり有効な風防を持っていなかったことを前提に、フェラーリのエンジニアが採用した技術が、バーチャルウィンドシールドなのだ。

ヘルメットを被って乗るスタイルを重視するオーナーがいたときのために、フェラーリでは専用のヘルメットとウェアも提案している。これもまたユニークな試みといえよう。
ロロピアーナの服にベルルッティのシューズの組み合わせが「イコーナ」ルック
ウェアは、50年代にボウタイを締めて乗っていたジェントルマンドライバーたちのスタイルを彷彿させるもので、ハイテクのレーシングスーツではなく、あくまで優雅さが重要視されている。

手がけたのはロロピアーナで、上下のスーツはユニセックスのデザインで、クラシックさとモダンさをバランスさせたものだ。これにベルルッティのシューズが合わせてある。ベルルッティが手がけているのはレーシングシューズではないが、履きやすそうな雰囲気だった。

ベルルッティでは炭素樹脂製のヘルメットに貼られたレザーも担当し、さらに今回東京に持ちこまれたモデルのシートのレザーも手がけていた。見た目はパティーヌの仕上げだろう、独特の色合いと艶が美しい。
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全長4657ミリのボディはCFRP製で、重量1500キロに抑えられている
「実車では(耐久性の問題などで)同じ仕上げは無理でしょう」と来日したフェラーリ本社のひとが語っていた。要はこういう世界観でイコーナ・シリーズを手がけていくということだろう。

300万ドルとも言われるSP1とSP2は、合計で500台ていどが限定生産される。買えるのは、先着順ではないし、フェラーリの主要モデルを複数所有しているだけでは、まだ資格をクリアできない。フェラーリの担当者からの”招待”が必要なのだ。

● 小川フミオ / ライフスタイルジャーナリスト

慶應義塾大学文学部出身。自動車誌やグルメ誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。活動範囲はウェブと雑誌。手がけるのはクルマ、グルメ、デザイン、インタビューなど。いわゆる文化的なことが得意でメカには弱く電球交換がせいぜい。

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