2019.02.01

攻めの運転が身を守る!

世界中の道、交通環境を63年間、距離にしてトータルで200万キロ走ってきた筆者が語る、究極の安全運転術とは?

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文/岡崎宏司(自動車ジャーナリスト) イラスト/溝呂木 陽

日本で教えられる運転は、ルールを守って譲り合い、注意深くていねいに、、といったところだが、僕も基本的にはそんな教えに添った運転を心掛けている。が、こうした教えは、ともすると消極的な運転を誘いがちなので、そこは要注意。とくに、多くに迷惑とストレスと危険を与える、マイペース運転、ノロノロ運転など論外だ。

僕は日本は元より、世界の多くの道、多くの交通環境の中を63年間走り回ってきた。走行距離にしても、トータルで200万キロ、海外だけでも数十万kmにはなっているだろう。途上国や未開の地等々、リスキーなところもずいぶん走ってきた。が、幸いにも、深刻な事故を起こしたことは1度もない。うっかりミスの軽い接触事故、多重衝突への巻き込まれ事故、、そんな程度で済んでいる。

もちろん、ツイテいた、ラッキーだった、といったこともあるが、「運もテクニックの内」と考えるのも間違ってはいないと思う。なぜなら、突発的に降りかかった危険にもわれを失ったことはなく、つねに冷静に対処してきた、対処できてきたことが、「運を呼び込む力」に繫がっていると思うからだ。また、その場その場の状況に臨機応変に対応できたことも、深刻な事故を免れてきた理由のひとつに挙げられるだろう。
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臨機応変といえば、、途上国の交通混乱には想像を超えるものがあり、そこにいきなり飛び込むにはそうとうな危機対応能力が求められる。先進国の安全ルールなどまるで通用しないからだ。混雑した交差点で、「一時停止して、右を見て左を見て、安全を確認して」、、みたいな悠長なことなどやっていられない。そんなことをしていたら、いつまでたっても動けないし、後続車からはクラクションの集中砲火を浴びることになる。信号のない交差点だって優先順位もなにもないし(たとえあっても、誰も守らないと思っていた方がいい)、相手が譲ってくれることもまずない。

では、どうすればいいか、、答えは簡単。「攻め」に転じればいい。先進国流の「守りの運転」から、「攻めの運転」に切り替えるということ。荒っぽい言い方をすれば、「相手を蹴散らす勢いと根性」、、つまり、相手をたじろがせ、相手に引かせるくらいの勢いと根性で、ノーズを突っ込み、加速し、自分の進路を強引に確保すればいい。
僕も始めは守りの運転をしていた、、のだが、まともに走れないし、かえって危ないと感じたので、意を決して「攻め」に転じた。

「攻め」とはいっても、むろん無謀な攻めなどしない。無謀な攻めは事故を招くだけだ。相手を、瞬間引かせる「決意」を示せばいい。いくらひどく混乱した交通状況でも、事故を起こしたい人などいない。だから、こちらが攻めの気持ちをしっかり示せば、相手は引く。しかし、引くときはしっかり引くことも重要。攻防のメリハリをキッチリつけずに中途半端な運転をすれば、即、事故に繫がる。

こうした運転と心構えが必要なのは、途上国だけではない。
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最近はほとんど問題はなくなったが、かつては、パリ、ミラノ、ローマ、NY、、といった先進国の大都市でも同様な状況があった。その代表例としてもっとも相応しいのは、パリ・エトワール広場の巨大ロータリー型交差点だろう。
エトワール広場には、シャンゼリーゼ通りを始め12本の通りが星状に接続している。12本の通りから流入したクルマは、大量のクルマが作る渦に巻き込まれながら広場を周りつつ、車線を移動しつつ、向かう通りへと出て行かなければならない。
12本の通りから進入してくるクルマ、12本の通りへ出ようとするクルマが、一つのロータリーへと集中するのだから、激しい乱気流が起こるのは当然だ。

現在は信号機もあるし、多くの警察官もいる。が、それでも、ロータリー内は7車線もあるのだから、修羅場であることに変わりはない。加えて、強引に突進しようとするクルマ、オロオロして夢遊病者のように彷徨っているクルマ等々が混在する。入ったはいいが出られず、何周もしてしまう人もいるらしい。

ちなみに、エトワール広場のロータリーは、フランスでもっとも事故が多い交差点であり、フランスの保険会社は、ここでの事故は免責扱いにしていると聞く。つまり、ここで事故を起こしたら保険金は出ないということだ。で、僕がこの「エトワールの戦い」をどう思っているのかというと、嫌いではない。いや、ハッキリ言えば「好き!」だ。

いつでも一発で渦に飛び込み、一発で渦から出る。それも速くクリーンに、だ。クリーンに、とは、誰かを怖がらせたり、危険な目に遭わせたりしないということだが、それは絶対してはいけないと心に誓っている。

エトワールは信号機のない時代から走っているが、バトルに負けたことはないし、もちろん事故を起こしたこともない。いつもクリーンにバトルしている。楽しくてしょうがない。

クルマを安全に走らせるためには控えめな運転をしましょう、となるが、全面賛成はしかねる。その場その場の状況に合わせて「硬軟両方」を上手く使い分けることが大切だと僕は思っているし、実際そうしてきた。

「攻めの運転が身を守る!」というタイトルにしたが、「攻め」と「守り」をメリハリつけて上手く使い分けてほしい。

● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト

1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。

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